Scanner

ENGLISH

メディアとその言葉

Focus

古い本のリライト論争

近年、出版業界では古い本の「リライト」が大きな話題となっている。

事の発端は今年の2月、イギリスの出版社『パフィン・ブックス』が、故ロアルド・ダール氏の著書の1部をリライトするため、センシティビティ・リーダー(社会から批判される言葉や人種差別、性差別にあたる表現がないかをチェックする人)を雇ったことに始まる。

このダール論争には作家から多くの意見が上がっている。

「子ども向けの本に変更を加える事は時に正当化されるものである」「実際にセンシティビティ・リーダーを交えて執筆する事でいい本になった」「気に入らないなら他のものを読めばいい」など、ポジティブな意見から批判的なものまでさまざまだ。

時代と共にわたしたちの感受性や言葉のもつ意味が変化するなか、メディアはどのようにアップデートしているのだろうか。出版業界だけに限らず、音楽や映画業界など幅広い視点から考察していく。

‘Times change’: what authors think about rewriting older books (The Guardian)

Related Articles

バービー映画にみるフェミニズム

この夏公開された映画「バービー」は世界中で大きな話題になった。バービーの新しい映画は、バービーランドと現実世界の舞台で、フェミニストのテーマに満ちた物語が展開される。バービーランドは女性が支配する楽園で、多様な成功した女性人形が登場する一方で、主人公のバービーは現実世界で男女の不平等を学び、成長していく。フェミニストの歴史を象徴する映画としてこれからも注目を浴びそうだ。

Of Course, the Barbie Movie Is Feminist—The Doll Has Been All Along (Parents)

二重整形広告に見る価値観の変化

今年2月中旬、SBC湘南美容外科クリニックの「Teen二重術」の広告が物議を醸した。電車内に設置されたこの広告には、「汗、水、すっぴん怖くない!たった3年の高校生活。1秒でも長くカワイイ私で過ごしたい」などの文字が。批判が集まったのは、一重より二重の方が可愛いという価値観だ。恐らく昨今の「ボディポジティブ」の風潮がこの広告に待ったをかけたと思われる。多くの人の目に留まる広告だからこそ、より価値観の多様性に眼を傾けることが求められる。

高校生向け「二重まぶた整形」広告が物議、コンプレックスビジネスに批判噴出 (ORICON NEWS)

辞書から消える言葉達

2021年12月17日、三省堂の国語辞典が約8年ぶりに刷新されたが、改定後の辞典から、「子ギャル」や「着メロ」など、90年代から00年代にかけて頻繁に使用された言葉が消えた。三省堂の関係者によると、辞書に載せる言葉の基準は、一般の方々の生活語彙として広く使われているか、そして、流行語ではなく長く使われているかであり、「今使用されている言葉」かどうかが重要なポイントになっているようだ。

国語辞典から“消える言葉” コギャル、着メロ、MD…新たに追加は「チル」や「ぴえん」 掲載の基準は? (FNNプライムオンライン)

歌詞の改訂が映す人々の意識変化

昨年、アーティストであるビヨンセとリゾがリリースした楽曲の歌詞の一部を変更した。問題は、特定の用語が英国では障がい者を中傷する意味合いで用いられる事であり、多くの批判の声が上がったため歌詞の編集に至った。歴史上、様々な理由から歌詞を変更する事は珍しくないが、今回のケースで注目すべきはその議論の量と迅速さである。人々の意識の変化により音楽業界も変化を求められているのかもしれない。

Artists have changed song lyrics before. But Beyoncé's and Lizzo's recent revisions are part of a new era (cbs58)