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これからのキャリア

Focus

パラレルキャリアを描く

今やいくつもの顔を持てる時代だ。

俳優でありながらYoutuber、経営コンサルタントでありながらエンジェル投資家、などなど。

NHKによれば、こうした「副業」を経験する(したことがある)人は、日本で働くひとの3人に1人に及ぶ。海外では、本業以外の時間に働くことを「ムーンライティング」と呼ぶという。

生活費を補ったり、より贅沢なライフスタイルを選択するための経済的な理由や、仕事内容やキャリアアップに不満がある場合に行われることが多いそう。1番のインパクトはパンデミック時のロックダウン。経済の停滞により大量にレイオフされた経験や、在宅勤務文化の定着により、複数の仕事を掛け持ちする人が急増した。

もちろん、このような働きかたは安定した雇用や経済を保証する役割もあるものの、今後は自己実現を達成していくための「パラレルキャリア」としての価値も注目されていくだろう。もはや広く知られる「副業」という本業のサブ的な捉え方というよりも、VUCA時代を生き抜いていくために「複数軸のキャリア」としての意味が重要視されていく。

とはいえ、日本で副業をしている人は全体の20%。まだまだニュートレンドな働きかたに、一歩勇気を出せる人は少ないのではないか。

今回のオピニオンでは、人生を有意義にするためのキャリアの描きかたや、様々な肩書きを両立するリスクにどう対処していけばよいのかを考察していく。

Dealing with employee moonlighting in the times of remote working (The Economic Times)

Opinion

「好きを保険に」する働き方

先日、友人のiPhone14でシネマティックモードを試し、その精彩さに驚かされた。アイデアさえあれば、スマホ一台で立派な映画を撮れそうな仕上がりだ。クリエイティビティを解き放つハードルは年々低くなっている。(iPhoneの価格は年々値上がりしているけれど)

Adobeが実施した調査「Future of Creativity」によれば、2020年以降、1億6,500万人以上の人々がクリエイターエコノミーに参入したという。日本でも7人に1人は、写真や動画、クリエイティブな文章を発信するクリエイターだ。

また、クリエイターエコノミー協会によれば、副業クリエイターの6割、趣味で活動するクリエイターの3割が、毎月数万円前後の収入を得ているという。たしかに、いわゆる企業案件やアフィリエイトに頼らずとも、直接収益を上げる手段が多様化している。

ライブ配信の投げ銭機能に、Substack のように月額制でニコンテンツを配信できるサービス、制作物やスキルを直接売り込めるC2Cのマーケットプレイスなどなど。

正直「好きなことで、生きていく」スタンスに100%振り切るのはリスキー過ぎると感じる一方、1つの会社にフルコミットする働き方が、今後も安泰かといわれれば疑問に残る。

たとえば、米シンクタンク ・ミルケン研究所のリー氏は、パンデミックとそれに伴う景気減退の中で、最も脆弱な労働者は、ブルーカラーよりもむしろホワイトカラーになるだろうと指摘する。背景にあるのは、ビジネスモデルの変化とソフトウェアの導入による自動化だ。

ほかにも成熟産業から成長産業への労働移動、機械による職業のリプレイスメントなど、自分の本業を揺るがしうる要因は、多岐にわたる。

そんな時代にあって、収入源を分散させることは、リスク回避の観点で重要になるだろう。

副業として、自分がリソースを割きやすい好きなことや趣味でセーフティネットとなる収入を得る。「好きを仕事に」ならぬ「好きを保険に」そんな時代が到来しつつある。

Future of Creativity (Adobe)

自分の好きに正直に働くために

毎回様々な人に出会えるのが楽しくてついつい何度も訪れてしまうゲストハウスがある。以前そこで2人の公認会計士の方と出会った。一人はノマドランナーとして、公認会計士の仕事をしながら全国を旅しており、もう一人は公認会計士を持ちながらもコンサルティングエージェンシーで働いていた。どちらも自分のキャリアをしっかりと築きながらも、自分の人生の軸を仕事ではなく好きなことに置いていることが素敵だと思った。

今の時代、コロナ禍のリモートワーク普及もあってか、日本が古くから敷いてきたレール通りに新卒で就職する以外の道が選択しやすいようになったのではないか。さらに、終身雇用やメンバーシップ型雇用が薄れつつある中で、ジョブ型雇用を導入する日本企業も増えつつある。それに伴って、働く人の専門性が重要視されることになり、より個人の興味やモチベーションにキャリアが左右されることになる。

ただ、今まで積み重ねてきたキャリアから外れて新しいことに踏み出すとなるとかなりハードルが高い上に、どんなスキルをどうやって身につけるべきかなど、キャリアパスを自ら切り開いていかなくてはいけない。私たちが自分の「好き」に正直に今日を「生きていくためには、やはり学び直しの場へのアクセスが必須であろう。一方で、日本では学び直しのための「リカレント教育」が定着していない現状がある。実際に、大学在籍者のうち、25歳以上を占める割合がOECD各国平均で約2割に達し社会人学生も相当数含まれるのに対し、日本は1.9%ほどにとどまっている。

これを受けて、大学側からリカレント教育を推進する動きが出ている。株式会社EBILABは、三重大学と共同してリカレント教育プログラムの構築・提供を進めている。プログラム内容としては、文科省が採択したDX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業に沿って、応用能力を必要とするDX分野を育成、リスキリング、キャリアアップを後押しするようなカリキュラムが組まれている。また、上場企業の62%がリカレント教育を導入しており、さまざまなプログラムを展開している。そのため、学び直しの機会を設ける術として、企業内の学び直しプログラムを利用することも多いに有効であると考える。

どのような形であってもVUCAの時代に生きる私たちは、知識をアップデートしていくことが必要である。私たちが好きなことをして生きていくためには、学びの場を常に探し、自身のスキルや知識を広げることに貪欲でいることが大事なのではないか。

三重大学と共同でリカレント教育プログラムの構築・提供を推進することが決定 (PR Times)

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