「ギフト」を巡る需要と価値観の変化
Focus
ギフトを贈るというコミュニケーション
国内のギフト市場に関する調査から見えてくるのは、「フォーマルからカジュアルへ」という変化の兆しだ。お中元やお歳暮など、フォーマルギフトの市場が縮小傾向にある一方、家族や友人に贈るカジュアルギフトは、年々存在感を増している。
コロナ禍でなかなか会えない相手と、贈り物を通じてコミュニケーションする、そんなシチュエーションが増えているようだ。
また、お手頃なプレゼントとしてオンラインギフトカードの市場規模も拡大傾向にある。18年度の1,167億円から、20年度には2075億円と、倍近くまで成長している。身近なサービスだと、LINEギフトは22年6月に累計ユーザー数が2,500万人を突破したという。昨年同期比で、約1,000万人増加しているというから驚きだ。
いまどき、そこそこ親しい友人でも正確な住所を知らないケースは多いし、わざわざフィジカルなものを贈るのは大仰な気もする、そんな細やかな思いをのせるのにオンラインギフトはぴったりなのだろう。
さて、よりカジュアルでパーソナルなコミュニケーション手段として発展しつつあるギフトのこれからを、つづくオピニオンで考察していく。
Opinion
気軽さと心地よさのアップデート
街はクリスマスムードだ。
今年はクリスマスパーティーもオフラインで行われる予感。顔を合わせるときにこそ、話のきっかけづくりとして持参したいギフト選びには苦労する人も多いだろう。パンデミックを経て、Z世代のギフト文化はどうアップデートされているのだろうか。
象徴的なのは、Z世代のギフトカード消費が(前年比で57%)増加傾向にあることだ。
最近ではSNS上でインフルエンサーブランドの台頭も著しい。プラットフォーム上で興味が多様化し、個別に狭まっていく中で、その人の「スキ」はより捉えづらくなっている。そんな中、贈る側もギフトカードの選択は「気軽」という点で重宝される。
さらに、「決めつけ」のプレゼント選びはご法度だ。アイデンティティや信念に対してマイクロアグレッションとなりうるギフトは両者にとって心地よい経験にはならない。
今後、体験をギフトにすることも増加していくだろう。クラシックコンサート・アートギャラリーのチケットなどの体験やワークアウト・ウェブマガジンなどのデジタルサブスクリプションを消耗品のオルタナティブとしてみたり。これはZ世代の興味・関心の高い分野であるクリスマスのゴミ問題をも緩和しうる。
ギフトを贈るという「気持ち」を温存しながら、その内容が受け取る人や私たちを取り巻く地球環境を傷つけないという配慮が「センスいい」ギフトとしての価値を生み出していくだろう。
ギフト、誰に送る?
友人の結婚式に参列した数日後、自宅にコシヒカリの食べ比べセットが届いた。お米とはなんともありがたい引き出物だ。クリスマスや誕生日、記念日など、1年で数回はギフトを送ったり、もらったりする機会がある。最近では12月に古着屋をオープンする友人に、だるまを送ろうと考えている。(好みが分かれそうなので一応確認するつもりだ)
イベントに合わせて誰かにギフトを送る・もらう、という文化は随分と昔から私たちの生活に馴染んでいるように思う。とはいえ、ホリデーシーズンを前に改めてギフト文化について調べてみると、気付かぬうちに変化しているものに気付かされる。
SNSの普及依頼、私たちがギフトを送れる相手の選択肢は大きく広がった。Facebookは2012年から相手の住所がわからなくてもギフトを送ることができる「Gifts」という機能を提供している。LINEでスタンプやドリンクチケットを友達に送るのは、わたし自身も何度か利用したことがある。
また、少しスタイルは異なるが、今年のグッドデザイン大賞を受賞したサービスに「まほうのだがしやチロル堂」というものがある。貧困状態の子どもたちが100円でカレーなどの食事やお菓子を食べることのできる駄菓子屋だ。地域の大人たちがサブスクでお金を支払い、子どもたちの食事代をサポートできる仕組みとなっている。
ギフトの送り方が多様化することで、家族や友人といった近しい人にだけでなく、お返しを求めない「サポート」や「応援」といったギフトの形が広がっているのだろう。
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知られざるクリスマスギフトの裏側
スタンフォード大学の調査によると秋のサンクスギビングからクリスマス、新年の季節にかけて家庭ごみは25%ほど増加する。食品、買い物袋、パッケージ、包装紙、リボン、リボンなどの廃棄物が増え、その期間中に毎週 100 万トンのゴミが埋立地に運ばれるそうだ。一方で、パンデミックによって消費者がよりサステナビリティに意識を向けるようになり、ギフトのトレンドも移行していく見解もある。
ブラックフライデーが消費を変える
私たちは、地球が資源を自ら再生させるよりも75%早く資源を使用しており、地球が枯れ地と化すのも時間の問題だ。一方で、消費を促すムーブメントは季節が巡るたびやってくる。環境的側面から消費文化を考え直す観点から、ブラックフライデーをボイコットしたり、実施方法を工夫する企業が増えている。パタゴニアはブラックフライデーの売り上げを100%環境団体に寄付している。また、アンチテーゼとして、地元の小さな店での購入や中古品の購入など、責任ある買い物を促進する「グリーン フライデー」と言った考え方も広まりつつある。