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加速する”ファスト”ファッション

Focus

ファストファッションの復活に何を見るか

ファストファッションのビジネスモデルが課題視される一方で、市場規模は拡大し続けている。特に業界を支える10代の利用率は男性が69%、女性は74%にも上る。やはりトレンドを追った服を常に手頃な価格でアップデートできるところがやはり若者にとっては最大の魅力だろう。

その中で、Forever21が3年ぶりに日本に戻ってきた。

Forever21は、6年で7カ国から47カ国に店舗を進出させ、ファストファッションの巨塔となった。しかし、価格やデザインの新鮮さで競合他社に淘汰された結果、破産申請をする運びとなった。 今回の再上陸にあたって、ファストファッションならではの価格のトレンド性に加えて、環境と人に配慮したサプライチェーンマネジメントや自社開発など、大量生産大量消費のサイクルを脱却すべくブランドとして日本に再上陸した。懐かしいファストファッションブランドの復活はすでに話題を呼んでいる。

トレンド性(回転の速さ)を保持しつつも、サステナビリティをどのように実現するのか、これからの動きに注目したい。

Forever 21 to re-enter Japan apparel market, starting with online sales (the japan times)

Opinion

業界の未来を変えるものとは

低価格、トレンドのデザイン、豊富なラインナップやサイズ展開。ファストファッションは ”消費者” に「ファッションの民主化 (=D&I) 」をもたらした。

一方、廃棄物と環境問題、過酷な労働環境など ”社会全体” への影響はここ数年で議論の争点となっており、真の意味でのD&Iを達成するにはもう少し時間がかかりそうだ。

ファストファッションの未来を考えるにあたり、根本的な問題はどこにあるのだろうか。そして目標を達成するためには何が必要なのか。先月ニューヨークで開催された、ファッション業界の有識者が集まる「DealBook Summit」の議論をもとに考えていきたい。

司会を務めたNYTのファッションディレクター、ヴァネッサ・フリードマンは「現時点での問題は化学繊維の使用ではなく、大量生産・消費・廃棄にある。」という。ブランドに求められるのは、収益性を重視したビジネスモデルへの転換というわけだ。高い品質とデザイン性の製品にはそれなりの価格をつける。一消費者として賛成したい気持ちはもちろんあるが、私たちはすでにファストファッションに慣れすぎてしまっている。

一方、服のセカンドライフをめぐる議論の中で「古い服を修理しカスタマイズすることでオートクチュールになる、という考えを構築する必要がある」という意見があった。

かつてスティーブ・ジョブズのファッションから「ミニマリズムや同じものを長く着るのがかっこいい」というイメージが築かれたように、海外のセレブリティがプリウスに乗り始めたことで「環境に配慮した選択がかっこいい」というイメージが築かれたように。私たちのイメージの再構築こそファストファッションの未来を考える鍵になるのではないか。

Can Fashion Be Profitable Without Growth? (The New York Times)

共感をどう生み出すか

「エシカルファッション」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。

ファストファッションへのアンチテーゼとして語られる言葉だが、壮大な理想論として捉えられることが多いのもまた事実だ。

コモンオブジェクティブの調査によると、過去6年間のGoogle検索で「サステナブルファッション」は46%、「エシカルファッション」は25%増加した。しかし、エコロジー認証のエコテックスが行った調査によると、ミレニアル世代の60%が認証された衣類に興味があると答えたものの、実際に購入したことがあるのは37%に留まるという。

この言葉にどこか重みが感じられないのはなぜだろう。まず、ファストファッションの欠点は多くの消費者にとって霞んでいる。プラスチックベースの素材は馴染みのない専門的な言葉によって隠されており、生産者の生活は「〜製」という一単語に集約される。記事で言及される最大の問題は、「エシカル」や「サステナブル」という言葉が、人によって異なる意味を持つ巨大な傘のような理想論として語られることだ。

カンボジアで児童労働を目の当たりにしたという、ファッション産業を取り巻く問題の深刻さを根拠づけるだけの原体験が、私のショッピングの意思決定を支えている。しかし、多くの人にとって環境汚染や労働搾取の実態を目にする機会は少ないだろう。

そんな課題を乗り越えるために必要とされるのは、より幅広い消費者に響く「ストーリーテリング」だという。超高速ファッションとして今注目を集めるSHEINは、世界で160億ドルの売上高を記録した。そんなSHEINがターゲットにする10代の若者が目にするTikTokでは、#SHEINのハッシュタグが344億回、#SHEINhaulは60億回言及されている。インフレが急進する中、数々のインフルエンサーがZ世代に語りかけるのは、質より量を優先するファッションの楽しさだ。

今後エシカルファッションという運動が、ファッションに対する倫理的なスタンスについて、「共感」できるストーリーを紡ぎ出せるのかが鍵となる。

The Problem With The Term "Ethical Fashion"(Forbes)

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