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「自分を知る」ために

Focus

「本当のわたし」を見つめる

どれだけ「自分」を精度高く捉えることができているだろうか。

就職の適性検査では、「こうでありたい」や「こうあるべき」というフィルターがかかってしまうこともしばしば。心に忠実に、自身の良い面も悪い面も見つめるのは、かなり勇気がいることだ。

キャリアを含め、人生をこの手に握りコントロールしていくためには、正しい自己認識が欠かせない。自己認識能力が高い人ほど、昇進しやすいといった研究もあるほどだ。しかし組織心理学者Tasha Eurichの著書によれば、実際に自己認識できているのは10〜15%に留まるという。

自己認識のプロセスは、ごまかしのない真実を受け入れるところから始まる。自分に対する偏見を取り払って正しく自己認識するには、第3者の評価に素直になれるスペースが必要だ。友人や同僚でも叶わないが、愛あるムチを打ってくれる人などそう簡単には存在しない。

そこで注目したいのが16Personalities。今やパーソナリティ別の相性や特徴を切り取ったコンテンツが、血液型診断同様目につくようになった。評価や昇進、就職のための利益を考える必要はない。自分による自分のための安全な空間で、パーソナリティを診断することができることは、精度高い自己認識の一歩を後押ししてくれるだろう。続くオピニオンでは、掘り出した強みをどう伸ばしていけるのか、教育の可能性を考察していく。

9割の人が「自分の強み」を知らないという残念 (東洋経済)

Opinion

可能性を広げるボーダレス教育

自分の好みや得意不得意、長所や短所。入試や就職、どのステップにおいても聞かれる質問だ。 毎度聞かれるたびにそれとなく答えていたが、いつからそれらを認識していたのだろうか。自分の自己認識が他人から見えるものとは違うかもしれないし、自分の思う苦手や短所が将来の可能性を狭めているかもしれない。

私は高校から今の専攻に至るまで筋金入りの文系で数学は私の天敵だったが、今年の春から理系に傾倒した修士で研究をする道に進むことになった。周りも自分もこの決断に驚いているが、自分のやりたいことを追い求める中で自分の数学に対する考え方が大きく変わった結果なのだと感じる。

中学までの義務教育は至って普通で5科目がきっちりと分かれていた。それが自分の将来のやりたいことに繋がりづらい原因だったのではないかと感じる。義務感で勉強をすれば苦手意識も芽生えやすいものだ。高校や大学に進学する上で、自分のやりたいことや将来を見据えながら学ぶようになり、やっと義務教育の重要性が見えてきたのが事実だ。

やりたいことと勉強の関連付けをもう少し早い段階でできないだろうか。きっと勉強がもっと自由で楽しいものであることに気づければ将来の選択肢も、自分の好きなことも増える上に自己認識の機会も増やせるだろう。

VUCA時代と呼ばれる今、教科書で学び、暗記して問題用紙に書き写すだけではなく、探究、コラボレーション、およびプロセスベースの学習が着目されてきている。化学、技術、工学、数学を中心的に学ぶSTEM教育が、近年これにアートの分野を加えたSTEAM教育として多様な教育機関で採用されつつある。探求、対話を通して批判的思考を養い、複合的なタスクを実行するための教育的アプローチとして注目を集めている。

STEAM教育は、従来の5教科の境界線がないことが特徴的だ。より実践的で何のための勉強かが分かり易い。学問を横断的に学ぶことによって今までよりも、勉強の意義がわかりやすく、より自由で楽しい学びになることが期待できる。これは勉強をする過程で自分の将来について考え、選択肢を広げるきっかけになるのではないか。

From STEM to STEAM: Education responding to the need of the times (The Business Standard)

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