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海外旅行記

自由のための闘争

今年1月、人生初のひとり旅に出た。

目的地の一つが、リトアニアの首都ビリニュス。旧市街と近代的なビル群が川一つ隔てて隣り合う、ユニークな情景に魅了された。

 

印象的だったのは、MOミュージアム。ベルリン・ユダヤ博物館や、ワン・ワールド・トレードセンターで知られるダニエル・リベスキンドが設計を手掛けたアイコニックな外観に、思わず引き寄せられる。コレクションの多くは、ソ連占領時代に日の目を見なかった作品たち。

美術館全体に、「自由とアイデンティティのための闘争」というテーマが通底している印象を受けた。”Celebrate for Change”と題された写真展が映し出すのは、独立運動に加わった市井の人々である。歴史の教科書がわずか数行で通り過ぎてしまう革命、その裏で”RED ARMY GO HOME”と訴えつづけた名もなき人々が確かに存在した。そんな当たり前の事実を、改めて写真に突きつけられ、ドキリとする。

彼らが命懸けで手にした自由を、自分は惰性で享受していないだろうか?改めて自由と向き合う姿勢を問い直すきっかけになった。

伝統と現代の狭間で

スペインはマドリッド。

今年ヨーロッパへ留学していた私は、高校生で出会ったスペイン人の旧友を訪ねた。オリーブオイルやハモンセラーノなどの絶品と、温かいピンクオレンジの光が照らす街並みは、心身を存分に満たしてくれた。

最も印象に残ったのは、プラド美術館にコレクションされているフランシスコ・デ・ゴヤの作品。かつて歴史の教科書でみた『プリンシペ・ピオの丘での虐殺』や『我が子を食らうサトゥルヌス』は力強く、どこか生々しい。スペインを築いた血と汗の歴史と、激動の時代を見つめる人々の心情は、そんな芸術から鮮明に読み取ることができる。

伝統が美しく残るマドリッドだが、友人はその伝統が時々息苦しく感じるという。スペインでは政治的に同性婚が認められているものの、それ自体に寛容かは別問題。宗教に支えられた保守的なジェンダーロールが未だ広く共有されていると、彼女は教えてくれた。

これまでニュースレターでも『#40 ジェンダーエクイティを獲得するために』をはじめとしてジェンダーを取り巻くイシューに向き合ってきた。古人が大切にしてきた伝統を守りながらも、現代にそぐわない価値観をどうアップデートしていけるのだろうか。大学生の今、高校生の頃は稚拙だった英語で意見を述べられるようになった。育った国や文化は違えど同じ問題意識を持つ旧友と、夜通し議論し、学び合う時間を過ごせたことは一生忘れないだろう。

ストリートチルドレンと会って考えたこと

今年の7月、夏休みを利用して約2週間フィリピンに滞在した。最初の3日間を首都のマニラで過ごし、それからまた飛行機で漁業が有名な街、ロハスへと移動した。

東南アジア自体初めてだったこともあり、街や人々の独特な雰囲気にワクワクした。そんな中でも印象に残っているのがストリートチルドレンだ。

滞在していた家の家族とお酒でも飲もうと買い物をしていると、7歳くらいの裸足の子どもが私に近づき、無言で手の平を伸ばしてきた。会計のお釣りを渡すと何も言わずにその場から立ち去り、また別の客にも同じことをして断られていた。

実は旅行前にフィリピンについて調べる中で、彼らにお金を渡すのはいいことなのか?という記事を読んでいた。もちろん金銭的なサポートにはなるだろうが、彼らを働かない大人にしてしまうのではないか、といった内容だ。

子どもたちにお金について教えるのは、親や学校が大きな役目を担っていると考えているが、ここでは自分のその一部になっているのかもしれない。とはいえ、今の彼らのサポートになっているのであれば、それはそれでいいのではないかと思う。scanningでは過去にも『#43 金融教育のニュースタンダード』で若い世代の金融教育について配信したが、もっと初歩的な「子どもとお金の教育」について考えるきっかけになった。