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自由なワークスタイルが可能にするもの

Focus

リモートワークの功罪

働く場所の「自由」は、コロナ禍で様々な規制に縛られた私達が勝ち得た、数少ない自由の一つだろう。リモートワークは従業員だけでなく、企業にも恩恵をもたらす。

NBER(全米経済研究所)の調査によると、ハイブリッドワークを導入する企業は、従業員の離職率が35%低く、満足度スコアも高かったという。また、リモートワークを認めることで、より広い地域の人材プールにアクセスできる。

また、オフィスコストの削減という観点からも、リモートワークにはメリットがある。海外ではオフィスを閉鎖するかわりに福利厚生を充実させたり、オフィスの空きスペースを貸し出すような取り組みが見られる。

一方で、ハイブリッドワークの成果に懐疑的な雇用者、マネージャーがいることも事実である。マイクロソフトの調査によると、リーダーの8割以上は、自身のチームが生産的かどうか確信を持てないと回答している。物理的に目が届かないことで、メンバーのマネジメントは難易度を増している。また、生産性はもちろん、チームの結束や社会的繋がりといった観点から、リモートワークの課題を指摘する声も上がっている。

続くオピニオンでは、リモートワークのメリットとデメリット、両者のバランスをいかに調整し活用するべきか考察する。

Why the trend toward remote work isn’t going to fade in 2023 (Los Angels Times)

Opinion

リモートワークで実現する私らしさ

春からコンサルタントとしての一歩を踏み出す。

周りにその事実を伝えれば、必ず帰ってくるのは「バリキャリだ!」「激務で大変そう。耐えられるの?」という言葉。正直、今後私らしい働き方をする上でリモートワークは欠かせない存在になりそうだ。今回は「女性とリモートワーク」という視点から、これからの働き方が叶える人生を想像してみたい。

働く女性を取り巻くイシューと言えば、「出産・育児、月経にまつわる諸症状」だ。リモートワークはそれらを緩和し、日本社会の課題であるM字カーブの解消をも手助けするだろう。カタリストは、全世界の7,400人以上の調査に基づき、育児をする女性がリモートワークを利用できる場合、利用できない場合と比較して、退職する意思がある割合が32%低いことを発見した。

月経にまつわる症状は人によって様々だ。毎月のサイクルを順調に過ごす女性もいれば、副作用を伴う子宮内膜症や月経前不快気分障害(PMDD)を経験する人も。リモートワークの活用やフレックスタイムでの勤務によって、決して一定ではない体調の波を考慮したワークスケジュールを作成することが可能になる。

ただし、リモートワークで「死角」となりがちな課題にも目を背けることはできない。家庭内の心身的な負担や、昇進を阻む近親バイアスだ。イェール大学が主導した研究では、リモートワークで子どもを持つ女性は、同じく在宅勤務の父親よりも、不安や孤独などの燃え尽き症候群やうつ病の症状を経験する可能性が高いことを結論づけた。また、Deloitte Women at Workによると、女性のハイブリッドワーカーの60%が会議から排除されたと感じており、ほぼ半数がキャリアアップに必要なリーダーとの接触を得られないことを懸念しているそう。

私らしい働き方とは、心身の変化やライフイベントの出現に対して、一歩は小さくとも立ち止まることなくキャリア積み上げていけることだ。息長く続いていくであろうリモートワークを活用しながら、「ジブン軸」を大切に働いていきたい。

Flexibility Is The Key To Supporting Working Mothers In A Post-Pandemic Workplace (Forbes)

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Work isn’t somewhere you go, it’s something you do (Spotify)