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あらためて考える「場」の役割

Focus

ソーシャル化するオフィス

パンデミックは私たちの生活行動に大きな変化を及ぼした。ピーク時には娯楽や外食の頻度がコロナ前の半分以下まで落ち込み、その影響は経済だけでなく人々のつながりにも。

前回配信した「#74 自由なワークスタイルが可能にするもの」でも触れたように、リモートワークには多くのメリットがある一方、チームの結束や社会的つながりといった観点から課題の声も上がっている。Microsoft Work Trend Indexの調査でも、85%の社員がオフィスに来る動機として「チームの絆を再構築するため」と回答。

オフィスという「場」にはいま、何が求められているのか。

Microsoftの最高マーケティング責任者クリス・カポセラ氏は、「アイデアやインスピレーションなど従業員がネットワークから得られる価値を提供する必要がある。」と語る。本物の文化とコミュニケーションは物理的な空間を超越するのだ。

今週のテーマは、あらためて考える「場」の役割。続くオピニオンでは、オフィスだけに限らず私たちのつながりを再接続するさまざまな場について考察する。

To Get People Back in the Office, Make It Social (Harvard Business Review)

Opinion

わざわざ集まりたくなる「場」の秘密

仕事も勉強も、わざわざ皆んなが集まらなくても出来るこの時代に、わざわざ皆んなが集まりたくなる「場」とは、一体どんなものだろう。

思い出すのは、留学先のデンマークで毎週出現するフライデーバーだ。金曜の夜になると、大学のキャンパスは、学生による学生のためのバーに様変わりする。そこは例えば、日本語を勉強する学生と日本人留学生が出会う場であり、教授から授業では聞けない話を聞く場であり、ときどきロマンスの舞台になったりもする。

多くの学生が(授業はサボっても)フライデーバーに足を運ぶのは、そこが単なるお酒を嗜む場ではなく、人と人との「繋がり」が生まれる場だからである。そして何よりフライデーバーは友人と集まる格好の口実になった。

他にも海外の事例に目を向けると、ベルギーの”WASBAR”やノルウェーの”Café Laundromat”の取り組みが面白い。いずれもランドリーだが、そこに集う人々の目的は、洗濯しながら「友人とカクテルを楽しんだり、マッチングアプリで出会った相手とデートする」ことである。洗濯をきっかけにしながら、人々が集まる口実、美味しいご飯や気の利いた読書スペースを提供しているのだ。

人々が集まるきっかけ、新しい繋がりや出会い、口実を生み出せるかどうかが、これからの場に求められていくだろう。

WASBAR | restaurant & laundry

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