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ティーン世代の“Be Real”な価値観

Focus

ソーシャルメディアと何者

TikTokがZ世代から高い支持を得ているのはなぜか?そこには彼らのSNSに対する価値観が影響しているという。

SNSはわたしたちが世界に向けて「自分が何者であるのか」を伝える選択肢となった一方、そこにはパフォーマンス的で、偽物のように感じられるコンテンツも生まれてきた。そんな多様なコンテンツに慣れ親しんできたデジタルネイティブである彼らは、何か違うもの、つまり“リアル”を追い求めているのだという。

以前にもscanningで取り上げた、1日に1回フィルターなしの写真を投稿するSNS『BeReal』は、2年足らずで2000万回以上ダウンロードされている。WIREDの記事では、このトレンドは「盛る」といった概念すらもなかったSNS黎明期へのノスタルジーであると述べられている。

もちろん、Z世代をひとつにタイプに分類することはできないが、彼らが求める“リアル”な価値観について、続くオピニオンでは深く紐解いていきたい。

Why Gen Z loves TikTok, being “real,” and nostalgia (DEPT)

Opinion

映えか、虚飾か

さまざまなエフェクトやフィルターでユーザーを楽しませてきたTikTok。しかし最新作の”Bold glamour”が波紋を呼んでいる。

機械学習により洗練されたフィルターが、自分の顔を全くの別物(贅肉が削ぎ落とされた頬, 分厚くてセクシーな唇など)に作り替えてしまう経験は、一部のユーザーや専門家から深刻な懸念を持って受け止められている。

特に若い女性が、フィルターによって「非現実的な美の基準」を押しつけられることの弊害は、さまざまな研究で示唆されている。WSJが報道したMetaの内部資料によれば、10代少女の3人に1人が、インスタグラムを見ることで、体型に関する悩みを悪化させているという。また、CDCの2021年のレポートによれば、10代少女の57%が、慢性的な悲しみや絶望を感じていたという。これは同年代男子の倍にあたる数値で、2011年からは60%増加している。

BeRealのようなSNSが流行する背景には、「常に魅力的でなければならない」という強迫観念から逃れようとする心理があるのだろう。

自分自身の経験を振り返ってみると、外見を盛ることとは無縁だったものの、経歴など外面を盛ろうとしていた時期(主に就活の頃)があった。演出した自分が評価された時、喜びとと共に、本当の自分が認められた訳ではないという虚無感を覚えたものである。

自分を良く見せたいという感情も、ありのままの自分を受け入れてほしいという感情も、同じくらい自然で強いものなのだろう。相反する2つの感情の間でバランスを取ることが、これからの私たち、そしてメディアには求められている。

‘Bold glamour’ TikTok filter can create unrealistic beauty standards and harm mental health, experts say (TODAY)

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