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私たちの生活を支える森の今

Focus

森林と私たちの健康

地球の陸地における約31%を占める森林。二酸化炭素を吸収し酸素を生み出すことから「地球の肺」とも呼ばれている。つい先日には国際森林デーを迎え、「森林と健康」がテーマに掲げられた。今週は、そんな森林の今と私たちへの影響について考えていきたい。

農林水産省が発表した2020年のレポートによると、世界の森林は1990年〜2020年の30年間で約1億7800万ヘクタール減少。これは日本の国土面積の約5倍に匹敵する。地域によって増減や要因は異なるものの、森林減少の主な要因として商業伐採・山火事・農地利用があげられる。

では世界の森林が減少する中、私たちへの影響はどのようなものが考えられるのか。ひとつは水資源の供給だ。森林は雨からきれいな水をつくりだすフィルターとしての役割を担っている。飲料水として利用可能な淡水の約75%は森林のフィルターを通過してきたものであり、この先も森林が減少すると安全な飲料水の確保が難しくなることが考えられる。

また、森林は台風や洪水といった自然災害のセーフティネットとしても機能している。気候変動によって自然災害が増加することも考えられる中、持続的に管理・保護された森林は、すべての人にとって健康と安全の向上を意味することになる。

一見、森林の問題と私たちの生活には距離があるように感じてしまうかもしれないが、持続可能な森林を考えることは、私たちの健康を考えることにも繋がっているのだ。

Healthy forests, healthy planet, healthy humans (United Nations)

Opinion

森を守るのは誰なのか

今この瞬間も、森林は減っている。それはもう凄まじいスピードで、2秒のうちにサッカーコート1面分が失われているそうだ。私たちの生活のためにも森林を守らなくては。一度は耳にしたことのあるフレーズだし、確かにそうなのだ。

しかし、私たちの生活に具体的にどのような影響があるのか、それはどのくらい先の話で、私たちは何ができるのだろうか。考えてみると意外とわからないし、難しい。

森林が伐採されている理由はいくつかあるが、主な理由は食肉、大豆、パーム油などの食糧生産のための土地開拓である。そして、森林の喪失と損傷は、地球温暖化の約 10% の原因であり、あらゆる気候変動をすでに引き起こしているのだ。また、降雨パターン、水と土壌の質、洪水防止にも大きな影響を与える。私たちは森のダムからの水の恵みを受けられなくなるだけではなく、災害を防ぐ強力な存在を失いつつあるのだ。私たちは豊かな生活を求めるあまり、自分の首を絞めているのだ。

そんな中で今私たちができることは、私たちの消費を見直すことだろう。そして意外なことに、消費行動を見直すのは敷居の高いことではなく、今日からでもできそうなのだ。

例えば、森林を守るための認証である、カエルマークのレインフォレスト・アライアンス。スーパーに売っているコーヒーやチョコレートなどに付いているのをきっと無意識的に見たことがある人も多いのではないか。これは森林を守り再生させるだけでなく、農場からスーパーのレジまであらゆる労働過程の責任を負う義務も伴っている。

また、コピー用紙や紙のパッケージに付いている、FSC認証は、きちんと管理された森林から生産された林産物や、その他のリスクの低い林産物を使用した製品が得ることができる身近な認証だ。また、森林保護の活動を促進する、サーチエンジン、Ecosiaでは検索するだけで植林ができるのだ。普段chrome派の方も拡張機能として追加できるので特に不自由なく使うことができる。

こうしてみると私たちができることは、意外とあるようだ。そもそも、森林が破壊されいるのはどこの誰のせいでもなく、地球上に住む人間の責任だと考えると、明日のスーパーの買い物が少しだけ変わりそうだ。

The Effects of Deforestation (WWF)

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3 billion trees(FISE)

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