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社会を紡ぐケアリングコミュニティ

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コミュニティが支える未来

世界全体で高齢化が進む中、エルダーケアーは私たちが考えるべく大きな課題の一つだ。それに伴って認知症患者の急増が問題となっている。アルツハイマー病ジャーナルに掲載された研究によると、過去 10 年にわたり認知症患者の数が世界中で爆発的に増加し、現在の認知症患者は約10万人に達した。さらに、2050年までに倍増すると予想されている。

そのような状況を背景に、世界中で「認知症村」や高齢者向けの「マイクロタウン」が開設されつつある。

オランダのアムステルダム近郊にあるホーゲヴァイクもその一つで、認知症の人々が日常生活を送るための「村」のような認知症施設だ。ここは、レストランや、カフェ、スーパーや劇場そして煉瓦造りの住宅地までもが村として機能しており、入居者は実際に買い物をしたりすることができる。また、入居者の家族や一般人も利用できるレストランなどの施設もあり、認知症施設として分断されているわけではなく、一般人や家族とも交流できるのも大きな特徴である。そしてこの街全体の人々が認知症患者の日常を支えているのだ。ホーゲヴァイクでは、入居者より多い数の医者や看護師などのスタッフが日常生活に溶け込んでいる。加えてスーパーの店員なども訓練を受けており、街全体で入居者のサポートができる体制が作られているのだ。

ここでは、たとえ認知症を患ったとしても日常から隔離される事なく、生活することができ、コミュニティのつながりを得ることができるのだ。

このコミュニティとして患者を支える考え方は、高齢者に限らず何らかの問題を抱えるマイノリティーにとってこれからの鍵となりそうだ。今回のニュースレターでは、「コミュニティによるケア」に注目していきたい。

As Cases Soar, ‘Dementia Villages’ Look Like the Future of Home Care (The New York Times)

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