伝統文化のコンテクスト
Focus
和紙が訴求する日本の職人精神
独自の風合いや質感を持ち、美しい光沢と透明感を持つ和紙は日本が誇る美しい伝統工芸の一つだ。
和紙は熟練した職人が手作業で伝統的な製法を用いて作るため、品質が非常に高く、耐久性がある。その上、自然繊維で再生可能植物由来の素材として廃棄物の削減やサステナブルな製品開発にも貢献しており、持続可能性や環境への配慮に敏感な消費者にとって魅力的な選択肢となりつつある。
和紙は日本の伝統的な工芸品として深く根付いており、日本の文化や美意識を反映している。世界の人々は、和紙を通じて日本の伝統や歴史に触れ、その価値と美しさに魅了されているのだ。 これらの特性により和紙は、アート作品やデザインにおける美学の要素として世界に注目されているのだ。
昨年、香港のショッピングモールでは、岡山発の和紙で作るデニム「WASHI」のポップアップが開催された。天然素材の和紙を独自の技術で「強くソフトな風合いのユニークな糸」に加工し、デニム生地に仕上げている。天然素材の和紙は「夏には涼しく、冬には暖かく、速乾性、形状記憶性などがある」特徴からデニム生地に仕立てる着想を得たという。昔から受け継がれる伝統文化は今も褪せることなく世界を魅了しているようだ。
今回のニュースレターでは、世界の伝統文化が新たな文化交流のコンテクストとなっている事例をいくつか挙げていく。
Related Articles
人々の繋がりを育むマテ茶
マテ茶は元々、パラグアイ、ボリビア、ウルグアイに住んでいた先住民グアラニ族が飲んでいたお茶であり、伝統的な儀式やもてなしのために消費していたものだ。現在でもマテ茶を飲む事は、主にウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイで重要な文化であり、それらの地域ではコーヒーよりも遥かに大きな人気を誇っているそうだ。彼らの多くは、同じ容器のマテ茶を友人や家族と回し飲みしながら談笑する、という時間を大切にしている。彼らにとって、こうしてマテ茶を共有することは、お互いの繋がりを深めることを意味しているのだ。
メキシコ文化における頭蓋骨
メキシコでは毎年11月1日と2日の死者の日に、人々が供物として、亡くなった人の名前が刻まれた砂糖で出来たカラフルな頭蓋骨を祭壇に飾る。この伝統はのルーツは、先住民族のアステカ族の儀式にあり、その当時は本物の頭蓋骨を祭壇に飾ることで死者を偲んでいたという。しかし、やがて侵略者としてやってきたスペイン人達は、祭壇に本物の骨を置くことを恐ろしく感じ、現在のようにシュガーペーストの頭蓋骨へと変更したとされている。
伝統工芸とファッションの融合
今年の3月に台湾で開催された「台北ファッションウィーク」では、伝統工芸とファッションの融合にフォーカスが当てられた。「洋服」という日常的なフィルターを通すことで、伝統工芸に目を向ける機会も多くなるだろう。一方、誰もが簡単に身にまとうことができるからこそ、見た目としてだけでなく、その背景にある文化や歴史を知ろうとする眼差しがより重要になってくるように感じた。
文化へのアクセシビリティ
ポルトガルの伝統工芸に関する情報がまとまったプラットフォーム「Saber Fazer」は、2019年に政府主導で開設された。知識の収集や普及、伝統文化の繁栄を目的に、専門家から旅行者まで幅広いユーザーが使用できるものとなっている。