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いま求められるメディアリテラシー

Focus

認知バイアスのリスクに目を向ける

情報が氾濫するデジタル時代には、不確かなニュースが数多く広がっている。テクノロジーの進化と共に大きな社会問題となるいま、私たちはこれらとどう向き合っていけばいいのだろうか。今週のscanningでは「いま求められるメディアリテラシー」について考察していきたい。

まず、私たちはなぜ不確かなニュースを信じてしまうのか。そこには、ものごとを先入観から判断してしまう「認知バイアス」が影響しているという。

たとえば、難民の受け入れに否定的な意見をもつ人は、「自治体の負担が大きくなっている」というニュースを、その真実性を確かめずに信じやすい傾向にある。このように、偏ったフィルターを通して情報を判断してしまうリスクがあるのだ。

また、直感的な判断も注意が必要だ。ここでは、アメリカのメディア『NPR』がエイプリルフールに行った実験を紹介したい。2014年、NPRは「Why Doesn’t America Read Anymore? (なぜアメリカはもう本を読まないのか?) 」というタイトルの記事リンクをTwitterに投稿。しかし、クリックした先にはその内容が書かれておらず、「このページを見た人はコメントしないでください」とあった。それにも関わらず、スレッドでは数多くの議論コメントが寄せられるという結果になった。この実験からも分かるように、1部の情報からものごとを判断してしまうケースは珍しくない。

認知バイアスには、意思決定を効率的に行えるメリットもあるが、情報を正しく判断するシーンでは大きな障壁となってしまう。認知バイアスを完全になくすことは難しいかもしれないが、まずはその存在を認識し、情報を正しく評価するための第一歩を踏み出すことが大切かもしれない。

Fact check: Why do we believe fake news? (DW)

Opinion

デジタル時代、若者のニュースとの付き合い方

去年デンマークに留学した時、現地学生の主流ソーシャルメディアが、Facebookであったことに驚いた。正直日本では、Facebookは上の世代が使っているもの、という勝手なイメージもあったため、国によってこんなにソーシャルメディアライフは違うんだと、とても興味深く思った。

InstagramやTikTokを何気なくスクロールしているだけで、受動的にさまざまな情報を得られてしまう今。若者の情報プラットフォームはどこなのだろう。また、彼らはそこから大量に流れてくる情報と、どのような付き合い方をしているのだろう。

2019年のデジタルニュースレポートによる調査によると、18歳から24歳の若者、いわゆるソーシャルネイティブ (インターネットがある環境で育った世代) の間では、Instagram、TikTok、Youtubeでニュースを消費する人が多いとわかっている。特にTikTokの情報リソースとしての利用率は、2020年から3年間で5倍と、劇的に増加している。これらのネットワークが支持される理由は、テレビに比べて情報がパーソナライズされていて多様な点にある。また、ロシアとウクライナの紛争などのように、急速に変化する出来事のリソースとしても好まれる傾向にあるようだ。

しかし、若者の間で、ニュースへの関心と信頼が低下し続けていることもわかっている。35歳未満は最も信頼度が低い年齢層であり、ソーシャルネイティブの間ではニュースを避ける人も大幅に増加しているようだ。デジタル時代に育った彼らは、上の世代から、自分達が消費する情報に批判的になるよう教えられたこともあってか、情報に対して懐疑的なアプローチをとることが多いようだ。

また、若者はニュースが気分に悪影響を与えるとも感じている。特に、政治に関する報道に偏りがあったり、大きな問題に対して影響を与えることが難しい現実に、自分が無力であると感じてしまう人もいるようだ。しかし、一方で、オンライン情報を信頼する人はストレスが少ないと感じている、という研究結果もある。今まさに相反する二つの情報をどう判別し消費するか、いちソーシャルネイティブ民として試されているような気さえしてきた。ちなみに個人的には、研究機関と著者のプロフィールなどを見るなど情報収集をして、その信頼性を見極めるようにしている。

このデジタル時代、メディアとの健全な関係を築くことが必要だ。ソーシャルメディアに対して、自分にあったアプローチや、ストレスのない方法を見つけたい。また、情報を適切に見定める自己防衛のスキルも、今後ますます重要になるだろう。

The changing news habits and attitudes of younger audiences (UNIVERSITY OF OXFORD)

ファクトから見つめる情報化社会

フェイクニュースは私たちのすぐそばで息を潜めている。私たちはネット上の何を信じて何を疑うべきか。

一般論として、信頼できる情報リソースや情報の発信者が直接体験して得た情報や、自ら行った調査・実験で得た情報、公的な機関が出す情報(いわゆる一次情報)に頼る、過度な協調表現や断言的な言い方を疑うことは有効だ。そしてこれらの対策は現代においてある程度デジタルリテラシー基礎として浸透しつつある。

一方で、フェイクニュースは真実のニュースより私たちに届きやすいことも事実である。ツイッターの投稿データを10万件以上分析した研究では、真実が1500名に到達するには、フェイクニュースよりも6倍の時間がかかったという。さらに、フェイクニュースの方が、真実よりも70%も多く拡散されやすいことも明らかになっている。

そのような中、セーファーインターネット協会(SIA)は、偽情報・誤情報対策を行なう「日本ファクトチェックセンター」を昨年10月1日に設立した。

新型コロナウイルス感染症に関する偽情報など、誤った情報による社会の混乱を未然に防ぐ試みで、有識者などを交えて情報を収集し、その真偽をWebサイト上で公開する。

主な活動として、日本ファクトチェックセンターのWebサイト「Facts matter.」で配信するファクトチェック記事の発信で、SNSなどで配信されている真贋不明の情報について有識者やファクトチェッカーなどによって情報を精査し、事実か否かをチェックして記事化する。また、ファクトチェックを行う体制は、「監査委員会」「運営委員会」「編集部」からなるそうだ。

また国外では、アルゴリズムを使用した虚偽情報の検出を行う研究も進められている。ソーシャルメディアにおけるコミュニケーションはネットワークとしてモデル化し、エンゲージメント間のつながりを分析するなどして、偽情報の拡散者を特定できるという。

国際情勢が揺れ動き、プロパガンダによるフェイクニュースに特に注意を払う必要がある今、真偽を確かめるサイトやアルゴリズムは今後注目を集めそうだ。

Algorithms can be useful in detecting fake news, stopping its spread and countering misinformation (The Conversation)

発信者として信頼されるために

現代における”発信者”は、どのように信頼を獲得しているのだろうか。まず、発信者と言っても、SNSにおけるインフルエンサーや現実世界における教師や社長などの組織のリーダーが存在する。そして、それらの発信者に共通するのは他者からの信頼が必要不可欠だという事だ。発信者として他者から信頼してもらうにはどうすれば良いのだろうか。今回は、オンラインビジネスでの信頼の獲得の仕方をヒントに、方法を探っていきたい。

SNSでの信頼獲得のポイントを以下にまとめてみた。

価値のある体験の提供

視聴者は、見るのに価値があるコンテンツを求める。彼らの注目を集めることに集中して価値の提供を怠ってしまうと、次第に視聴者は離れていってしまう。

社会的な証明を利用

人々は、自分が知っている人の意見を信頼する傾向がある。例えば、SNS上で多くの人々との交流を行う事で、発信者としての安心感が増すかもしれない。

透明性の維持

視聴者にコンテンツを真剣に受け止めてもらうに、質の高いモノを提供しなければならない。そこで、他の信頼できる研究などをデータの裏付けに用いるなどしてコンテンツの透明性を保ちたい。

一貫性の維持

視聴者は、曖昧な内容のコンテンツを好まない。自分の発言に責任を持ち、明確な視点や立場からコンテンツを提供することを心がけたい。

上記のポイントは、あくまでSNS上でどう振る舞うべきかへの言及だが、現実世界における”発信者”にとっても、これらは重要な点だろう。筆者もこの記事の発信者として信頼されるために、これらのポイントを忘れずに心がけていきたい。

7 Ways to Get More People to Trust Your Content (Entrepreneur)