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ウィンター・ブルーへの備え

Focus

冬場の難敵「ウィンター・ブルー」

冬になると気分が落ち込む、といった経験はないだろうか。この状態は「ウィンター・ブルー」と呼ばれ、誰しもが経験し得るものだ。しかし、イェール大学医学部冬季うつ病研究クリニック所長のデサン博士によると、ウィンター・ブルーは季節性感情障害 (SAD) として知られる一種のうつ病など、より深刻な病気を引き起こす可能性があるという。

精神科医のガベラス氏によると、ウィンター・ブルーの原因で最も大きいのは、秋から冬にかけての日光不足だという。日に当たる時間が短いと、精神の安定に深く関わっているセロトニンという脳内物質が不足し、感情や気分のコントロールが難しくなるからだ。社会人の多くは暗いうちに出勤し、1日中オフィスで過ごし、再び暗い中帰宅する。そのような生活は人の心に悪い影響を与え、ウィンター・ブルーを引き起こす可能性が高いそうだ。

米国精神医学会によると、米国の成人の約5%がSADを経験しており、特に女性では男性の約3倍にのぼる。また、SADの多くはウィンター・ブルーが引き金となって発症するが、季節変化と同時に様々な他のストレスを抱えている人は更に注意が必要だという。

日本では、本格的に冬が始まろうとしている。今回のニュースレターでは、様々なウィンター・ブルーへの備え方をリサーチし、日照時間が短くなる年の瀬を心身ともに健康的に乗り越える術を模索したい。

Winter is coming. Here's how to spot — and treat — signs of seasonal depression (npr)

Opinion

ヒュッゲで冬を乗り切る

寒さが苦手な人、もう夏が待ち遠しい人も、ウィンター・ブルーへの備えとして、”冬を楽しむマインド” を取り入れてみてはいかかだろうか。

去年1年間、デンマークでの交換留学を体験した。そこで持ち帰った現地文化のひとつが、HYGGE (ヒュッゲ) だ。HYGGE はデンマーク人の大切な価値観、マインドセットで、デンマーク語で “心地よさ” を意味する。寮生活を共にしたデンマーク人たちは、夜リビングでくつろぐ時に音楽をかけたり、クッキーを焼いたりなどして、この心地よい空間、HYGGEをセッティングすることに長けていた。そんな生活にちょっとした工夫を施すことが得意な彼らは、ウィンター・ブルーともうまく付き合っていたように感じる。

HYGGE は生活にシンプルな工夫を加えて、冬を満喫する方法でもある。例えば家のどこかにHYGGEスペースを作ってみてはどうだろう。毛布をたくさん敷いて、窓の外で降る雪を眺めながら本を読む。想像しただけでも、ワクワクしてこないだろうか。また、気分を高揚させると知られている音や匂いを試してみてもいい。研究によると、ラベンダーとバニラの香りは、一般の人々にとって特にリラックス効果があるとわかっている。また、炎そのものの視覚にはリラックス効果があるので、キャンドルを灯してみることもおすすめだ。

1人の時間も良いが、HYGGE は誰かと共有するとなおさら良い。臨床心理学者のポーリン・ウォリン氏によると、社会的なつながりと感謝の気持ちは、幸福と相関関係があることが証明されている最も重要な要素である。大切な人と長く散歩したり、家族や友人に料理を作ってみたり。あたたかい鍋を囲むことは、日本の HYGGE かもしれない。一緒に食事を共有して楽しむことは、社会的な絆、幸福感、満足感を高めてくれるのだ。

厳しい気候条件にも関わらず北欧諸国の幸福度が高い理由には、HYGGE のようなライフスタイルがある。気分も落ち込みやすい時期だが、ポジティブマインドで乗り切りたい。

Practicing hygge can help you beat the 'winter blues': Here's how (abc NEWS)

カラダをつくる3要素

11月も終わりに差し掛かり、一気に冬の到来を感じるこの季節。ここでは、ウィンター・ブルーの1番の原因と言われる日光不足への対策をはじめ、食事や運動の方法について紹介したい。

日照時間が短い北欧諸国では、日光に似た人工の光を浴びる「光療法」が広く取り入れられている。最近では、インテリアに馴染むデザイン性の高いものや、目覚めの時間に合わせて光の強度を自動調整してくれる多機能なものまで、数多くの照明が発売されている。また、家庭だけでなく、スウェーデンでは生徒の学力向上を目的に学校に導入された事例もあるようだ。

光療法が難しい場合でもすぐに実践できるのが食事と運動だ。冬には、ビタミンDを豊富に含む食べものが推奨されている。具体的には、サケやマグロなどの魚、きのこ類、大豆などが上げられる。また、北欧諸国ではサプリメントの使用も一般的であり、アイスランドではビタミンDサプリメントの摂取がすべての成人に推奨されている。

運動は週に3回、30分間のウォーキングで幸福につながることが研究で明らかになっている。また近年では、VRヘッドセットを活用したフィットネス市場も拡大傾向にある。リズムゲームの定番「Beat Saber」や、ボクシングやダンス、HIITなどを楽しめる「FitXR」など、VRフィットネスは冬の運動の新しい選択肢になるかもしれない。これらの対策をうまく組み合わせながら、快適な冬への準備を進めてみてはいかがだろうか。

10 tips for beating the winter blues (IOWA)

寝起きで負のサイクルを断ち切る

何だか冬は朝が辛い。そんな経験を誰しもしたことがあるのではないだろうか。単純に寒くて布団から出たくなることはもちろん、冬季に日照時間が減少することで、体内時計が変化したり、やメラトニン(睡眠に影響するホルモン)の分泌に影響が出るそうだ。

また、冬になると暗い時間が長くなるにもかかわらず、睡眠障害が悪化する傾向にあるという研究もあるそうだ。アメリカの成人2,000人を対象とした調査によるとSAD(季節性感情障害)によって冬は無関心、全体的な不満、孤独感 などの感情を引き起こすことがわかった。そして、これらの感情により、毛布の中にいる時間が延びても、48%の人が必要な時間眠れていないという。 そうして睡眠が損なわれると、更なる気分の低下やストレス、不安、集中の散漫などを引き起こし、段々負のサイクルから抜け出せなくなってしまうのだ。

やはり言うまでもなく、季節が変わってもなるべく一定の生活リズムを保つことは大事らしい。 とは言っても、言うは易く行うは難しなのだ。そんな怠惰な私やその他の人のために作られたのが、日の出目覚まし時計だ。

The Telegraphの記事では冬の朝を制す、ライト付きの目覚まし時計をいくつか紹介している。時計のライトが一定時間にわたって徐々に明るくなり、自然な日の出をシミュレートし、穏やかに目覚めさせる。時計のライトが朝日の色に寄せてあるだけではなく、目覚ましとしてのサウンドにもこだわっているものもある。

iPhoneのデフォルトアラームで毎朝起床している私だが、これを機にもう少し寝起きのいい朝を迎えることを考えてみたい。

https://www.telegraph.co.uk/recommended/home/best-wake-light-alarm-clocks/