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パンデミックが加速させる住居の変化

パンデミックが加速させる住居の変化

パンデミックは世界の居住スタイルをいかに変化させているのか。今回のハイライト記事では、米国、英国それぞれの変化を取り扱う。

米国では、コロナウイルスの感染拡大、在宅ワークや退職者数の増加に伴い、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市から、より広くて物価の安い郊外、特に南部に位置するフロリダ州やテキサス州への人口流入が顕著に見られる。パンデミック以前から、不動産価格の高騰やミレニアル世代の高齢化により都市居住ブームは弱まっていたが、パンデミックはその流れを加速させた。

過去の通例では、都市部の中でも平均所得が低いエリアからの転出が多かったが、今日では富裕層が多く住むエリアからの転出数が上回る逆転現象が起こっている。その結果、都市部の賃料は低下。ニューヨークの2021年度の固定資産税額は、25億ドル(約2,700億円)もの減少が予想され、どれほど大きな経済打撃を被っているかが想像できる。

一方で、都市部から人口が流入する郊外では、急速にインフラ整備が進む。大企業がオフィスを構え、レクリエーション施設やショッピングセンターが立ち並び、在宅ワークに特化した、壁やクローゼットの中にデスクスペースを設置したアパートなどの新設。さらに交通渋滞にそなえた道路の拡張工事までが行われている。結果として、郊外での雇用の回復は都市部を上回る。

英国でも、米国と同じく都市部から郊外への人口流入が見られる。人々は家族と過ごせるより広い家、在宅ワークの可否、隣人との離れたスペースを求めており、ロンドンやブリストルといった大都市から、ベリーやハリファックスなどの郊外に転出している。

その結果、ロンドン中心部のアパートでさえ賃料が低下する一方、郊外では15%〜20%上昇している。2020年から2021年にかけての9カ月で、物件検索の最人気キーワードが「ガレージ」というのも郊外人気を裏付ける。車の所有はもちろん、ガレージを常設オフィスにする人や、ジムにしたいと考えている所有者によって検索されたものだ。

一方で、人々がオフィスに戻るようになると、賃料が低下したロンドン(都市部)にテナントが戻る兆候が見られる。パンデミックがもたらす住居の変化は、ブームとして終わってしまうのか?それとも、私たちの生活における重要な選択肢を与えてくれたのか?

 

BACKGROUND

56.2%: 世界で都市部に住んでいる人口の割合(2020年)

3,872ドル(約43万円):米・マンハッタンのアパートの平均家賃(2021年6月)

40万人:東京からの転出者数(2020)

Opinion

インテリアとしてのグリーン

私は観葉植物が好きでさまざまな種類の植物を自分の部屋に置いている。植物に合わせて植木鉢を選ぶことや、新しい出会いを求めて花屋や園芸店にふらっと立ち寄ることもよくある。部屋に置いてる植物はそれぞれが必要とする水や日光の量、温度も違えば成長速度も様々で、そんな個性豊かな彼らの小さな成長を日々見守ることが私の小さな楽しみであり、毎日のルーティンでもある。

中でも私のお気に入りは、ヘゴという植物である。ヘゴはシダ植物だが根茎が立ち上がるため木のような姿をしており、葉の裏や根茎に産毛のような柔らかい毛が生えていて、なんとも言えない愛らしさがある。

グリーンは日々の中で癒しを与えてくれるだけでなく、様々な効果が科学的に証明されている。TEXAS A&M大学の Agrilife extention や Fobes Japanでは、グリーンが人にもたらす影響が科学的に検証された事例をまとめている。なんとグリーンを置くことで、リラックス効果やポジティブなエネルギーのレベルを高めることができるという。また、グリーンのある環境で長時間過ごす人は、他と比べ周りと良好な関係を築く傾向にあり、他者への関心や共感を高めることに役立つ。加えて、パフォーマンス向上に大きく寄与することも分かっており、周りにグリーンがある環境で過ごすことで記憶の保持力は最大で20%増加する。

心理的効果以外でも、グリーンは人に様々な恩恵をもたらす。室内は屋外よりも空気が汚れやすい環境にあるが、グリーンを室内に置くことで汚染物質を吸収するほか、カビやバクテリアが最大60%減少するという。また、蒸散量が多い植物は自然の加湿器としても機能も期待できる。

インテリアとして、多くの効果を期待できるグリーン。部屋の雰囲気や環境に合わせて様々な種類を見て回るのも楽しいだろう。これを機に窓辺に新しいパートナーを迎えてみてはいかがだろうか。

良いものを使い繋いでいく

原稿に向き合いながら、デンマーク留学の準備を進めている。この記事が発行される頃には、まだ見ぬオーフスの地へ足を踏み入れているはずだ。初めての1人暮らし、それも海外生活ということで、個人的にも住まいや持ち物について意識することが多かった。

1年間の北欧暮らし、折角なら現地の洗練された感性を最大限生活に取り入れたい。しかし、見方を変えればたったの1年。品の良い調度品を揃えたとして、わざわざ日本に持ち帰るとは思えない。どうせ1年でお役御免になるなら、安物を使い潰せば良い。お金も選ぶ時間も節約できる。そんな相反する心の声に挟まれながら、「良いモノを長く使う」ことと「暮らし方に合わせ身の回りのモノを軽やかに変えていく」ことを両立できないものかと考える。

例えば、洋服の場合、この両立が個人的にうまく出来ている気がする。リセール市場が成長すると共に、私自身、ファストファッションよりハイブランドの古着に食指を伸ばす機会が増えた。今では、リセールバリューを念頭に、思い切って新品を買ってしまうこともある。

とはいえ家具のリセールはファッションほどの隆盛を見せていない。やはり輸送にかかる費用や手間がボトルネックになっているのだろう。ファッション業界と異なり、家具メーカーのブランドがあまり立っていないことも、リセール市場での家具選びを難しくしているという指摘もある。

課題は山積だが、1stDibsChairishのようにハイエンドなヴィンテージ家具を取り扱うマーケットプレイスの台頭や、IKEAによる家具の買取&再販など、市場規模が166億ドルにも達すると推計される中古家具市場のポテンシャルを引出そうとする動きも見える。

良いものを選び、使い、(子や孫ではなくとも)他の人に繋いでいく。C2C、消費者(Customer)から消費者へ、そして揺りかご(Cradle)から揺りかごへという考えが家具選びの場面に浸透していく日はそう遠くないかもしれない。

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