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Do the right thing (1989)

1989年に制作されたスパイク・リーのコメディ・ドラマ。舞台はうだるような暑さのブルックリンの黒人街。その街の一角には20数年にわたってイタリア系アメリカ人が経営するピザ屋がある。そこでデリバリースタッフとして働く主人公。店内の壁にかけられたスターの写真はイタリア系アメリカ人ばかり。ある時、客の一人が黒人スターの写真がないことに憤慨したことから、それを火種に街の人々を巻き込んだ事件へと発展していく。

作品に登場する人物は、みな人間的な弱さや葛藤を持ちながらも日々を逞しく暮らしていて、決定的に悪い人物は誰一人いない。…にも関わらず、終盤では事件へと発展して大騒動が起きてしまう。タイトルの「DO THE RIGHT THING」は、「人として正しいことをする/当然のことをする」という意味の言葉だ。しかし、それぞれの正義がぶつかった先には、一体何が起きるのか?30年前の映画ですが、今なお私たちの周りにある課題に問いを投げかけてくる作品です。

AMERICAN UTOPIA (2020)

元「トーキング・ヘッズ」のフロントマンで、グラミー賞受賞アーティストのデイヴィッド・バーン。そのデイヴィッド・バーンが2018年に発表したアルバム「AMERICAN UTOPIA」を元に、NYのブロードウェイで公演されたパフォーマンスを1本の映像として収録したコンサートフィルム。

監督は上記「DO THE RIHGT THING」と同様にスパイク・リー。驚くのはミニマルな舞台セットやクールな照明演出で広げられる、アーティストの力強い演奏と圧倒されるほどのパフォーマンス。そう、コンサート自体がめちゃかっこいいのです。

さらに、その公演に込められるメッセージはとても深く、様々な国籍・性別・スキルから成り立つメンバー構成や、ロックから、ラテン、アフリカンなど幅広いジャンルを盛り込んだ楽曲ラインナップ(そして、様々なバックグラウンドの人が集うNYブロードウェイでの公演!)は、多様であることの素晴らしさと楽しさ、互いに認めあうことへの賛美を、文字どおり体感させてくれます。30年の時を経た「Do the right thing」へのアンサーも感じられるので、ぜひ一緒に観てみてください。

演奏はSpotifyのアルバムからも聴けます。

 

AMERICAN UTOPIA on Broadway

search (2018)

行方不明になった娘を探すため、SNSから情報を辿っていくこの映画は、物語すべてがパソコン画面の映像で進んでいくというなんとも斬新な作品だ。インド系アメリカ人のアニーシュ・チャガンティ氏が監督を務め、彼自信アジア系であることから、主要キャストはアジア系の俳優が飾っている。(彼が23歳のときに製作した2分半のショートムービー『SEEDS』もおすすめ。彼はこの作品がきっかけでGoogleから引き抜かれる)。

FacebookやInstagram、Twitterといった様々なSNSが舞台になっているのだが、そこで描かれる「現実世界のギャップ」に強く胸を打たれる。パソコン画面越しの映像構成は、そこに隔たる大きな壁をなんともうまく表現している。

ラストの衝撃の結末には、味わったことのないほどの大どんでん返しを食らった。この衝撃を誰かとシェアしたい。。

Coach Carter (2005)

そしてもう1本。米・リッチモンドにある荒廃した高校バスケ部の実話をもとにした映画だ。そこに新しく配属される監督コーチ・カーターを演じるのは、『スターウォーズ』でメイス・ウィンドゥ役を務めたサミュエル・L・ジャクソン氏。一見、鬼監督が不良部員を更生させ、チームを強くしていくスポコン映画のように思えるが、 実際に見始めるとそれは全く違っていた。

コーチ・カーター氏は、犯罪率が高く、多くの学生が卒業できずに刑務所で生活しているリッチモンドの地で、どれほど教育が大切なのかを教えようと奮闘する。恵まれない環境だからこそ、教育が将来を照らす光になると信じ、指導するコーチ・カーター氏の熱血指導には、思わず涙が出てしまう。自分の娘への教育という問題と照らし合わせ、思わず見入ってしまった作品だ。

THE GUILTY/ギルティ(2018)

110番通報の受付にとばされた刑事のアスガー。そんな彼の元に、1本の電話がかかる。それは、元夫に誘拐されたと思しき女性からのSOSだった。果たしてアスガーは、ごく限られた手がかりのみで彼女を救い出すことができるのか。

劇中映し出されるのは、アスガーが篭る緊急司令室のみ。私たち観客も、神の視点で状況を俯瞰することは出来ない。知覚情報の8割を占めるとも言われる(真偽不明)視覚が奪われた時、想像力は私たちを新たな情景へと連れ出す。

描き方の面白さはもちろん、(ネタバレになるので詳しく書けないが)「信頼できない語り手」問題を通して炙り出される私たちの偏見や、アスガー自身が過去に起こしたトラブルなど、現実にも通じる社会課題が随所に埋め込まれた骨太な作品である。

マーメイド・イン・パリ(2020)

現在留学しているデンマークは、童話『人魚姫』で知られるアンデルセン生誕の地。そこで紹介したいのが、こちらの作品。『シェイプ・オブ・ウォーター』の二番煎じ感漂うキービジュアル(失礼)に、一抹の不安を覚える方もいると思うが、想像以上の良作である。

ストーリーは王道ど真ん中。パリを舞台に、過去の失恋を引きずる男ガスパールと、恋を知らない人魚ルラの紡ぐラブロマンスである。しかし、恋を阻む壁は大きい。ルラは海でしか生られず、マーメイドに魅了された人間は「心臓が破裂」してしまう。そんな2人のゆく末は、ぜひ本編で見届けてほしい。

物語もさることながら、注目してほしいのが、その世界観である。リアルとファンタジーの境界を巧みに溶かす装飾や画作り、そしてパリの美しさにきっと心を奪われるはずだ。

インターステラー(2014)

たびたび発生する異常気象によって地球の寿命は途絶えかけた近未来。世界中で深刻化する食糧難によってほとんどの職種が失われ、農家の需要が増加していた。かつては優秀なエンジニアとして宇宙開発に携わってきた主人公クーパーも、今では大規模農業を営んでいる。

クーパーの娘であるマーフィーと部屋で起こる怪奇現象をきっかけに2人は解体されたはずのNASAの極秘研究所にたどり着く。

クーパーは地球の限界を知らされ、マーフィーに反対されつつも子供たちの未来のために、第二の地球として希望のある星を探す旅に出る。

行く先々で未曾有の事態に見舞われる中で、クーパーは希望の星を見つけることができるのか。

地球の危機から第二の地球を探す王道SFストーリーだが、他のSFとは圧倒的に違う部分が愛にフォーカスした映画である部分だ。そして、クリストファー・ノーランらしく、伏線が緻密に練り込まれているので、何度見ても楽しめる映画である。「時空を超えた愛」をヒントにぜひ伏線を回収してみてほしい。

ダークナイト・ライジング(2012)

クリストファー・ノーラン監督が手がけるバッドマンシリーズの3作目であり、最終章である。バッドマンシリーズでは、2作品目のダークナイトで登場する、ヒースレジャー演じる狂気的な悪役ジョーカーが有名だが、ここで紹介するのはあえての3作品目である。

ダークナイトでの戦い以降、屋敷に篭り切って社交会への扉を閉ざした主人公ブルース・ウェインであったが、「猫」との呼び名で名を馳せる泥棒セリーナ・カイルとの出会いを皮切りに街全体を危機に晒す大きな事件に巻き込まれていく。悪役として登場するベインは、ジョーカーとはまた違う味のある悪役として複雑なバックグラウンドを持つ。彼のバックグラウンドがこの3作品目としても、バットマンシリーズとしても伏線回収の大きな鍵となる。

もちろん第1、2作品を先に鑑賞してもらいたいが、3作品目は単体でも十分に楽しめる作品である。この作品を鑑賞するにあたって、クリストファー・ノーランが監督指揮を取ったヒーローアクションとして丁寧な物語構成を是非楽しんで欲しい。