資源活用のジレンマ
Focus
パッケージ再利用のリアリティ
近年パッケージの再利用が高い注目を集めている。この背景には、十分に機能していないリサイクルシステムだ。研究によるとプラスチック廃棄物の約80%は埋め立て地や自然環境の中に眠っているという。
はたして再利用はこれに取って変わる環境ソリューションとなり得るのか?
再利用のメリットは大きく2つある。1つめは繰り返しの利用を前提としているため、多くのパッケージを製造する必要がないこと。2つめはリサイクルのような複雑な工程がないことだ。
しかし、再利用パッケージには、製造と製品洗浄にかかるエネルギーを回収しなければならないという課題もある。つまり何度も再利用を経てはじめて、課題解決のスタートラインに立つことができるのだ。
とはいえ、製造と輸送のエネルギーを完全に相殺することは難しく、環境負荷への代償は避けがたい。また、最新の調査では「サスティナブルなパッケージにより多くのお金を払いたい」と70%の人が回答しているが、実際に行動に移すことができたか否かは不明瞭なケースが多い。
では、これらの課題に企業はどのように取り組んでいるか。
成功事例の1つとして、世界的なリユース・エコシステムの構築をビジョンに掲げる「Loop」を取り上げたい。食品や生活用品のパッケージを再利用可能なものに置換し・回収するサービスを提供している企業だが、その取り組みの中でパッケージをデポジット制にすることで80%以上の回収率を達成している。
さらに再利用システムへの参加をシンプルにするため、オンラインを介した提供/回収から、米国内外の小売店へとタッチポイントを移している。購入者が気軽に返却できるパッケージの回収箱も街中に設置するという。
Loopの事例をはじめ、参加機会の増加は再利用を促しコストを下げるために欠かせない。このような取り組みが増え、ソリューションへの参加が一歩ずつ進んでいく未来に期待したい。
Opinion
バイオマスストリームのポテンシャル
「樹木が空気中の二酸化炭素を吸収する」、子どもの頃に理科授業でそう習った方、多いんじゃないでしょうか。では、改めて大人のみなさんへ問題。樹木が朽ちて分解されると収された二酸化炭素はどうなるでしょう?
答えはもちろん「再び空気中に二酸化炭素が還元される」。…よく考えれば当たり前だけど、CO2問題に関して言えば、木を植えるだけでは完全に解決されず、植えた後の木材の活用/処理方法までを考えなければ、課題の先延ばしになってしまうことがシンプルに理解できる。
記事で紹介されるベルリン発の環境スタートアップ「Made of Air」は、このサイクルを断ち切り、CO2の発生を防ぎながら廃棄木材を原料とした、カーボンネガティブなバイオプラスチックを作る新興テック企業だ。
「気候変動を”逆転”させる」という企業ミッションを掲げる彼らは、CEOインタビューの中でも「目標はCO2排出量を削減することではなく、そもそもの炭素を除去すること」と語る。
取り組みの結果として、2016年の創業以降、約10トンものバイオプラスチックを製造。それらの材料は建築や家具の材料、自動車をはじめ、様々なプロダクトに利用される。実際、提携プロジェクトの中では、自動車メーカー audi のショップファサード、H&Mが手がけるサングラスのフレームなどもこの材料が活用されているそう。
環境保護を目的とした植樹はこれまでよく耳にしていたが、将来的にその樹木をどう活用し処理していくか?を視野に入れることも、将来的な地球環境の改善には必須なのだ。そんなことをニュースから考えさせられる。私たち消費者としても、その商品がどんなプラスチックで作られているのか?購入の際に判断を求められる将来が近いのだなとも。
冬支度をはじめる前に
安くて環境にいい製品。
こんな言葉を聞くと、つい手を伸ばしたくなる。だがこの決断、まだ一考の余地があるという。
アイルランドのファストファッションブランド「Primark」は、2030年までにすべての衣料品をリサイクル素材、または持続可能な方法で調達された素材に置き換えることを宣言した。
CEOのポール・マーチャント氏は「サスティナブルな製品は、所得に関係なく誰もが手に入れることができるべきだ」と語る。
そんな一方で、「安さ」は私たちの財布の紐を緩め、大量消費を助長する可能性をはらんでいる。そこにサスティナブルという動機が加わるとそのスピードはより一層加速するだろう。
パタゴニアの元CEOであるローズ・マーカリオ氏は、「最も環境にやさしい洋服は、すでにあなたのクローゼットの中にある」という言葉を残している。
最近はすっかり肌寒くなり、洋服を選ぶのも楽しい季節に突入した。冬支度がてら改めて自分のクローゼットを覗いてみると、数年は袖を通していない2軍・3軍の洋服たちが奥の方に並んでいる。そこに流れる冷たい空気にハッとする。よし、今年はこいつらで乗り切ろう。
もちろん、新しい洋服を買うことが悪ではない。すでに冬に向けて購入を検討されている方がいたら、安くて環境にいい「長く愛用したい」ものをおすすめしたい。
リサイクルボックスのその先
リサイクルボックスに投げ込まれたものが100%リサイクルされ循環している、と言うのはまだまだ夢物語なのだろう。
アメリカ、カリフォルニア州ではリサイクルボックスに投げ込まれるうちの多くがリサイクル不可能であり、実質的なリサイクル率はかなり低く止まっている。これを受けて州議会では、州のコミュニティでリサイクルされたことを証明できない限り、リサイクルマークの使用を禁じる法案を可決した。
日本の廃プラスチックのリサイクル率は85%を超えている。しかし、このリサイクルされるプラスチックのうちの60%が燃やすことによってエネルギーを回収する、サーマルリサイクルに利用されている。
果たして、廃プラを燃やすことでエネルギーを得ることを再利用と呼べるのだろうか。使われなくなったプラスチックが再資源化されて、再び市場に戻ってくるのは捨てられるプラスチックのほんの一部でしかないのが現状である。
私たちは普段の消費活動の中で様々なエシカルマークを信じ込んで、裏側の実態と向き合うことをなかなかしてこなかった。「リサイクルされた容器を使用しています。」と書かれていても、その割合が5%と80%ではかなり大きく変化する。
そろそろ、スウェーデンでの一人暮らしもだいぶ慣れてきたこの頃、スーパーに並ぶエシカルマークに甘んずることなく、その背景を見据えて商品と対峙してみよう。
リサイクルと品質のトレードオフ
飲料の価格に、使い捨て容器のデポジットが上乗せされるデンマーク。どのスーパーにもある回収機で気軽にキャッシュバックを受けられるため、買い出しのたび、空のペットボトルをいそいそとスーパーに持ち寄っている。
同デポジット制度の導入以降、およそ12億本の飲料容器が回収され、リサイクル率は90%以上にのぼるデンマークで、家庭から出るプラスチックごみの循環を推進する新たなプロジェクトが始まった。
リードするのは、デンマーク技術研究所(DTI)。環境保護庁(DEPA)の支援を受け、再処理技術の最適化やリサイクルプラスチックの品質向上を目指すという。
これは、プラスチックを繰り返しリサイクルできるようにするため、避けて通れない道である。
背景にあるのは、廃プラスチックの多くが、元より質の劣る製品に「ダウンサイクル」されている現状への問題意識だ。
環境負荷の低減を語る上で、リサイクルと品質(あるいは製品寿命)のトレードオフをいかに解消していくかが今後、問われていくことになるだろう。