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栄養摂取の最適化

Focus

ゲイツ財団と栄養問題への取り組み

世界最大規模の慈善団体『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』は、向こう5年間で世界の栄養問題に取り組むため、過去最高となる9億2,200万ドルの拠出を誓約した。

この資金の多くは、栄養ニーズの高い南アジアとサハラ以南のアフリカを中心に提供される予定だという。中でも、ゲイツ財団の中核目標である、女性と子どもの「健康で生産的な生活」の達成を目指す。

国連が発表した最新のレポートによると、パンデミックは飢餓を増加させ、特に低中所得国における栄養不良の改善を弱体化させている。ゲイツ財団は、この現状が栄養問題への取り組みを10年以上遅らせ、解消されない場合には世界経済に年間3.5兆ドルもの損失を与える可能性があると危惧している。

また、今回の取り組みには、他の資金提供者へのコミットメントを促し、国を勇気づける効果もあると期待している。グローバル開発部門のトップを務めるクリストファー・エリアス博士は「栄養はすべての健康への推進力であり、目標達成まで残り9年に差し掛かったSDGsの目標達成にも寄与する」と語る。

ゲイツ財団はこの他、「食品におけるビタミン・ミネラルの強化」「栄養価の高い食品システム」「新しいアプローチの研究」という側面からも栄養問題に取り組んでいる。

Gates gives record $922M for nutrition, urges others to 'step up' (Devex)

Opinion

冬めくオーフス、そしてビタミンD

早くも吐息が白く染まり、冬の訪れを感じさせるデンマーク。厳しい寒さもさることながら、鬱々とした気分に拍車をかけるのが、光の差し込む隙間すらない曇り空。そして、早すぎる日の入りだ。

冬場の日照時間はわずか7時間。本曇り、またはほぼ曇りの日が7割。そんな日々をやり過ごすうえで、欠かせないのがビタミンDサプリだ。

主に、日の光を浴びることで生成されるビタミンD。骨を丈夫に保ち、免疫力の向上に寄与する。

しかし、全人口のおよそ50%がビタミンD欠乏症を患っているというから驚きだ。原因は、行き過ぎたUVケア、外出機会の少なさ、などなど。あながち、皆さんにとっても身近な問題かもしれない。

当然、気になるのは摂取量の目安だろう。推奨されるのは、1日あたり600IU(一般的な成人の場合)、ビタミンDの適切な血中濃度を保つため、1日3,000IU程度の補給が必要とする研究もある。

1日20分ほどの日光浴で充分まかなえる量だというが、働き方をリモートに切り替え、なかなか外へ出なくなったなど、不安のある方は、サプリを手にとってみるのも良いかもしれない。

とはいえ、何事も大切なのはバランス。1日に10,000IU以上の摂取は控えることが望ましいという。含有量には、くれぐれも注意が必要だ。

Vitamin D supplements: How much you should take each day, according to dietitians (Business Insider)

エナジードリンク2.0

エナジードリンク市場は、パンデミックによるライフスタイルの多忙化、運動習慣の変化を受け、2026年までの成長が見込まれている

特に若年層やアスリートの間での消費が増加し、RTD市場においても大きなシェアを占める一方、砂糖含有量の多さなど「体に悪い」という印象を拭いきれない。

そんなエナジードリンク市場において、「オーガニックエナジードリンク」が今後最も成長率の高い製品になると予想されている。

2020年に発表された『Rowdy Energy』は、シュガーフリーはもちろんのこと、合成着色料や防腐剤も一切使用していない。また、吸収速度の遅い天然カフェインを使用することで、ドリンクの効果がなくなると疲労感やエネルギー不足を感じる「クラッシュ」が起こりにくいよう設計されている。

さらに、水分補給に欠かせない電解質 (イオン) が豊富に含まれており、スポーツドリンク的側面を持ち合わせていることが分かる。

かつて運動や仕事、テスト期間などの正念場に選ばれることの多かったエナジードリンクは今後、身体づくりを軸とした人生全体のパフォーマンスを支えるものへとシフトするだろう。

Energy drinks attract consumers with better-for-you ingredients (SmartBrief)

体が本当に必要としているビタミン

今ではスーパーやコンビニでも栄養サプリや栄養ドリンクが簡単に手に入る。私が現在生活しているスウェーデンでは、日照時間の短さ故にサプリメントは日本よりも身近な存在に感じる。薬局に行けば性別や年齢ごとに様々なビタミン含有量のサプリメントが並んでいる。子供用にはカラフルで可愛い栄養グミのようなものもあるくらいだ。

しかし、私たちはこれらの栄養について正しい摂取量や効能を理解しているだろうか。肌が荒れたらとりあえずビタミンC、髪の毛や爪を伸ばすために亜鉛を摂ったりなど、私自身いくつか心当たりがある。healthlineの記事では毎日摂取するべきマルチビタミンの効能、摂取量とそれらを含む食品についてまとめている。ビタミンD、B-1,B-2,マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、葉酸があげられている。

これらの殆どは食品から摂取できるものの不足しがちだと言われている。特に、体に貯蔵することができない亜鉛や、日光に当たることで生成されるビタミンDには気を使う必要がありそうだ。

私たちはどのビタミンが不足しているのか自分の体と向き合うことで知ることができる。healthlineによるとダメージしがちな髪の毛や爪はビタミンB7の不足、口内の荒れや広角のひび割れには鉄分やビタミンB群不足、ビタミンCの不足は肌荒れだけでなく歯茎の出血なども引き起こすという。

無闇に栄養に手を出す前に何が私たちの体に足りていないのか、自分の食生活や体調と向き合って必要なビタミンやミネラルを見極めることが必要だ。

According to Nutritionists, These Are the 7 Ingredients Your Multivitamin Should Have (healthline)

そのサプリになにが入ってるの?

2019年、アメリカのサプリメントメーカー・Rainbow Lightへの訴訟が起きた。広告の製品成分に虚偽の可能性があり、その真偽の検証と情報開示を求めるものだ。

このような訴訟が起きた理由は複雑だが、ビタミン剤などのサプリメントは薬品のような規制が行われておらず、メーカーに判断が委ねられいるのが要因のひとつだ。実際、ある効能を訴求する製品でも、ブランドが異なれば成分の調合も配合量も大きく異なる。

記事では妊婦向けのサプリメントの事例をもとに、グレーな規制ゾーンとどう向き合うかが論じられる(最終的に良質な食事の必要に結論が向かってしまう…)のだが、個人的に真の解決手段となるのは、冒頭のような製造元への製品グレード検証と情報開示の請求。あるいは国家機関に基準を制定するように声をあげることなのではないかとも考える。わたしたちの健康は与えられるものではなく、勝ち取っていくものなのだ。

What’s in Your Prenatal Vitamin? (NYT)