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コンシューマーカルチャーへの一票

Focus

豊富な品揃えで考える余白を。

もとより、私の海外旅行の一つの楽しみはスーパーマーケット巡りだった。

デンマーク留学に来て、初めてのひとり暮し。節約するぞー!とウキウキな気持ちで商品を眺めると、そこにあったのは想像以上に豊富な選択肢だった。

「ミルク」1つとっても10種類はくだらない。いわゆる「普通」な脂肪分高めな牛乳から、低脂肪乳、無脂肪乳、植物性のミルクとして豆乳、オーツミルク、アーモンドミルク、ライスミルク、ヘーゼルナッツミルクなど。サプライヤーも様々で、オーガニックであることはほぼ前提だ。

日本のスーパーと違った点は、それらの価格差がほとんどないこと。「価格」という数字で簡単に判断できる基準が通用しない時、自然と頭に浮かんだのは、身近にある豊かな環境と自身の健康への配慮だった。

日本に暮らしていても、そんな体験ができるお店がある。「オーガニックを日常使いする社会を構築する」をミッションに店舗・オンラインで食材や日用品を揃えるパリ発のスーパーマーケット、ビオセボンだ。オーガニック製品を取り扱いながら、アレルギーや食の嗜好といった多様なニーズに対応できる品揃えや必要な分だけ購入できる量り売りの仕組みなど、ヨーロッパ風な工夫が多い。

環境や健康、動物福祉…様々な切り口がある中で、食の倫理も一人ひとりの主観によるところが大きく、一つの正解がないものだ。だからこそ、豊富な選択肢の中から消費自体の意義や影響、責任を考える「余白」を創り出すことが大切なのではないだろうか。

パリ発のオーガニックスーパーマーケットBio c’ Bon (ビオセボン)

Opinion

重さに見出すストーリー

マイボトルを持ち歩くことは、「サステナへの第一歩」として浸透しつつある。私も日本ではマイボトルを持ち歩くようにはしていたものの、スウェーデンに持ってくることをすっかり忘れてしまっていた。スウェーデンのカフェではマグカップや紙ストローが使われていたり、ペットボトルはデポジット制でリサイクルボックスがスーパーに設置されていたりなどと、ごみの削減に街全体が積極的ではあるものの、やはりふと喉が渇いた瞬間にマイボトルが欲しいものだ。

どうせマイボトルを買うなら長く使える素敵なものが欲しいと探していたところ、ベルリンの小さな雑貨屋さんにカラフルな水筒が並んでいるのを見かけた。なんともポップで可愛い色に惹かれて、手に取ってみると驚くほど軽かった。なんと重さは、500mlのボトルなのに80グラムしかないのである。しかも、この80グラムとはペットボトルではなく、マイボトルを使った時に節約できるCO2の量なのだそう。この小さくて軽い水筒に込められたストーリーはこれにとどまらず、製造から梱包、輸送までのCO2排出量はトレースされており、植林によってこれを相殺する活動も進められている。

私はそんな水筒に一目惚れして、ついに念願のマイボトルをゲットしたわけだが、この軽さとスタイリッシュでスリムなフォルムが、持ち運びの際のめんどくささを払拭してくれる。

「サステナ」や「エシカル」について考えた時に出てくる「めんどくさい」と言う感情はこれからの消費活動を考える上で大きなキーワードになりそうだ。「めんどくさい」や「大変」、「コストが高い」をポジティブな感情に変えたり、障壁を取り除いてくることでこれからの行動を変えるハードルを圧倒的に下げることができるのではないか。

What does -0.08 mean? (24bottles)

足元からのメッセージ

つい先日、BEAMSが数年前に発行していた「IN THE CITY」という文芸カルチャー誌を吉祥寺の古本屋で購入した。その中のエッセイ「ハイヒールにはタフな街で、タフなハイヒールを」では、NYの不安定な路面環境でも尚、スニーカーでなくハイヒールを履く女性について書かれている。「ハイヒールは戦闘服の1部であり、女性たちは足元から様々なメッセージを発している」。この文章からは少し時代を感じたものの、これは現代にも置き換えることができるのではないかと思う。

子どもが産まれ、自分の洋服を買う機会もすっかり減ってしまった私だが、昨年にNIKEの「AIR ZOOM-TYPE」というスニーカーを購入した。ご存じの方も多いかもしれないが、NIKEは積極的にサステナビリティへの取り組みを行なっている。このスニーカーでも、リサイクル素材のAIRソールや再生レザー (スウェード) が使われており、100%再生可能エネルギーのもと製造されている。

企業として「世界中のすべてのアスリートにインスピレーションとイノベーションをもたらすこと」をミッションに掲げているNIKEは、スポーツの未来、ひいては地球の未来をも守るという使命を担っているのだ。改めてNIKEのサイトを見てみると、素材とデザイン・サプライチェーン・運用と小売という3つの観点から取り組んでいるという。

こうして調べていると、ますます愛着が湧いてきた。このスニーカーは今後、気候変動と闘う戦闘服として私のメッセージを発信していくだろう。「おしゃれは足元から」なんて言葉をよく聞くが、現代においてはその言葉以上の重要性を持っているのかもしれない。

ナイキのサステナビリティへの取り組み (NIKE)

長く愛すという究極のサステナビリティ

「買う」という行為は自分の中に新たな価値観を招き、より良い社会の在り方に一票を投じる意思であるのだと最近では強く感じる。

ニュースレター、記念すべき1本目を読み返し、改めて原点に立ち戻る。最近の買い物や、身の周りのアイテムなど、等身大の視点から「人や環境にやさしい」企業とはどのようなものか、考えを深めたい。

最初に白状してしまうと、私自身、日々の雑多な買い出しで「倫理」だの「環境」だの小難しいテーマに思いを馳せることは(残念ながら)ほぼない。

しかし、時には印象的なアイテムと出会うこともある。その1つがイッタラのキャンドルホルダーだ。2020年にローンチされた“Recycled glass collection”の一員で、素材には廃棄ガラスのみ用いられている。

「2030年までにイッタラの事業全てから出る廃棄物をリサイクルまたは再利用し、一切の廃棄物を埋め立て地に送らない」そんな目標への第一歩として、店頭に並んだ訳だが、当然、当時の私は知る由もない。(というか、英語のキャプションを読み流していた)

私はただただ、造形と色彩、かっこよく?言い換えるなら、イッタラの追求する「時代を超越した美しさ」に惹かれていた。その引力は、小難しい論理を遥かに超えるものだった。

もちろん、製品のカーボンフットプリントなどはとても重要な要素だ。しかし、それと同じくらい、長く愛せるものを作る/買う、そんなストレートな姿勢が、求められているのではないだろうか。

人々は所有するもののデザインが永続的であることを求める権利があり、さらにイッタラの製品が時代遅れになることは決してないと、私たちは信じています。

リサイクルグラスコレクション発売 (iittala)