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消費体験のニュージェネレーション

Z世代が変化させる4つの消費行動

Focus

1990年後半から2000年代に生まれたZ世代の人々は、私たちのショッピング体験を大きく変化させようとしている。彼らは、世界人口の30%以上を占め、年間での購買力は約1430億ドルと推定される。Newsweekの記事では、Z世代がもたらす消費行動の変化を4つの観点から紹介している。

1. バリューショッピングの再定義

2. SNSとインフルエンサーを通じた購入

3. デジタルと実店舗での体験の融合

4. 新しい支払い方法

バリューショッピングとは購入体験から得られる価値であり、これまでは価格や品質などが中心となっていた。しかし、Z世代は目に見える製品だけでなく、ブランドの使命や目的を理解し、どんな社会を築こうとしているのか重要視している。

次にSNSやインフルエンサーを通じた購入の増加だ。McKinseyによると、彼らの約40%は購入の決定にSNSの影響を受けているという。大衆の意見よりも、それに精通していると思われる特定の個人を探す傾向にあるのも特徴的だ。

このようにオンラインから受ける影響は大きい一方、Z世代の47%はオンラインよりも実店舗での買い物を好むという結果も出ている。そのため、オンラインと実店舗をシームレスに融合させる「フィジタル」な体験が必要となる。

また、購入体験だけでなく支払い方法にも変化が起きている。「Buy Now, Pay Later」は若い層に非常に人気があり、2022年末までには、約44%が過去1年間にこのサービスを利用するようになると予測されている。これら消費行動の変化への対応は企業にとって重要性を増していく。

Four Ways that Gen Z Is Changing Shopping Forever (Newsweek)

Opinion

タブーに挑むフェムテック

世界では女性の4人に1人が思春期や青年期にスポーツを諦めている

ジェンダー平等が多く議論される中、女性特有の悩みをテクノロジーで解決する「フェムテック」が注目されている。スポーツにおける女性の悩みとして、月経という生理現象が関わることも多いためだ。

そんな中、アディダスが開発したのは「TechFit Period Proof Tights(テックフィットピリオドプルーフタイツ)」。生理用ナプキンなどのずれを防止し、女性アスリートが躍動感を持ってトレーニングに励むためのプロダクトだ。さらにアディダスは、2022年にスポーツをする女性特有のニーズを認識し、女性に焦点を当てた製品イノベーションに大規模な投資を行うことを発表している。

一女性として持つ特有の悩みは尽きないが、日本ではあまり議論されることの無い話題であるため、周囲の知識・理解不足を背景に課題が見えづらくなっている。

だからこそ、影響力の大きいブランドを筆頭にジェンダーの多様性を包括したプロダクトを開発することは、夢を諦めてしまう人や多くのアスリートへのエールとなるだろう。

この風潮は、Z世代の購買行動にも顕著に表れている。欧米の87%のZ世代は、ファッションにおけるジェンダーの平等と包摂を改善すべきだと強く考えており、またほぼ半数(49%)の学生が、マーケティングにおいてジェンダーの表現と包括性がより優れているブランドからの購入を希望しているのだ。

スポーツウェアブランドの努力によってスポーツが誰にでもアクセス出来るようになることは、ブランドの成長はもちろん、多様性を包括する社会構築にも直結するだろう。ジェンダー平等を推進していく上で今はタブー視されがちな話題も、徐々に多くの人に開かれていくことを願う。

Adidas Creates New Possibilities for Women in Sport With Its Biggest Ever Commitment to Innovation, Atheletes and Future Generations (The Free Press)

リセール市場の芽吹き

「新品購入前にフリマアプリでの値段を調べる」52.7%、「服などの購入時まずフリマアプリに出品があるかを調べる」46.9%。これら2020年にメルカリが発表した消費者行動の調査結果から、私たちの生活にリセールという概念が浸透しはじめていることが分かる。

世界的に見てもリセール市場は急成長しており、中古衣料の再販サイト「ThredUP」が発表するレポートによると、アパレルのリセール市場は、2021年から2025年にかけて約3倍の470億ドルまで拡大するという。アウトドアブランドの Patagonia を筆頭に、ここ2年間でArc’teryx・Levi’s・Madewell・lululemonなど数多くの小売業者がリセール市場に参入している。

ブランド視点から考えると、サステナビリティが求められる現代において、リセールは儲かるプログラムのひとつだ。環境問題への対策という前提に加えて、「新たなリソースを投入せずにいかに利益を上げるか」というビジネスの合理性もこの市場の成長を後押ししている。

また、消費者の視点では、憧れのブランド商品を良心的な価格で手に入れることができるようになる。さらに、このような市場の変化は、長持ちしない新品の商品を購入の選択肢から除外することにもつながる。

しかし、私たちが中古品のみを購入するといった世界の実現は難しい。現状、経済の大部分は新しいものの製造と販売によって成り立っている。また、他人が使用したものに抵抗を感じる人もいるだろう。単に中古/新品の善悪という話ではないだけに難しい問題だ。そんな中、ナガオカケンメイ氏の著書「もうひとつのデザイン」の一節が考えるヒントになりそうだったので紹介したい。

私たちは新品を買う喜びと、使い込んで経年劣化を楽しむ喜びという2つを獲得しつつあります。これはバランスのとれた幸せの表れじゃないかと僕は考えます。

新品であれ中古であれ、購入し、使い続けた先に生まれる「新しい価値の芽吹き」に美を感じる。こうした豊かな感性が、市場や消費者をよりよいカタチへと変化させていくのではないかと思う。

Big retailers are getting into the secondhand market. Will that change how we shop? (Grist)

コンビニ大革命

キャッシュレス社会のスウェーデンでは、スーパーのレジに立っている人は1、2人くらいで、大部分はセルフレジだ。

人件費削減、店舗の回転率の向上、金銭授受によって生まれてしまう誤差を防ぐことができるなど、セルフレジによって享受できるメリットは大きい。しかし、セルフレジに頭を抱えることも日常茶飯事である。レジでスキャンした商品を電子量り機能付きの台に乗せることで、正しい会計を行うシステムなのだが、重さが釣り合わないなどのバグによってレジ自体が使えなくなってしまう。そうなると、店員を呼ぶしかないのだが、大抵1人がレジ打ちをしているだけで、誰も呼べそうにない。そうなると隣の機械に移るしかない。一台レジが使えない上に商品をスキャンし直さなくてはいけないとなると、圧倒的に非効率である。

一方で、Amazon go を筆頭に、レジすら通らないシステムがだんだんと普及してきている。Amazon go はアプリに支払い方法を同期し、レジを通らずに商品を持って店外に出るだけで決済が完了するシステムである。このAmazon goは現在、米国でコンビニスタイルのAmazon goと、食料品をメインに扱うAmazon go Grocery の二種類で店舗数拡大中である。加えてロンドンでは、アマゾンフレッシュとして店舗展開している。さらに英国では、食料品スーパーTescoもロンドン中心部にチェックアウト不要の店舗をオープンした。

レジの概念を小売業界においてなくすと言うのは、かなり革新的であり私たちにとっても初めは抵抗があるだろう。しかし、圧倒的な回転効率の拡大や、紙レシートの削減、マイバッグ推進のしやすさなど期待値はかなり大きい。日本でもAmazon go型の店舗が続々と都内にオープンしているという。レジなし文化が普及すれば、朝のコンビニで少食やコーヒーのために、並ぶ時間を焦ったく感じることもなくなるだろう。日本のコンビニ文化がアップデートされる日もそう遠くはないかもしれない。

Amazon Go and Amazon Fresh: How the 'Just walk out' tech works (Pocket lint)

「拡張」するショッピング体験

ショッピングを楽しむうえで、「利用シーンがはっきり思い描けるものだけ手に取る」というマイルールを課している。数多の過ち(修学旅行で買ったドラゴンのキーホルダーとか)から学習し、買い物で派手にやらかすことは少ない。とはいえ、購入前のイメージと、現実が噛み合わないこともしばしばだ。

そのため、服から家具まで、さまざまな商品を、現実世界に重ねて試せるARショッピングへの個人的(そして、おそらく社会的にも)期待は大きい。普及の鍵として、UBCのYing Zhu氏は、AR体験と購買プロセスのシームレスな連携を挙げている。

たしかにARアプリから購入ページにいちいち遷移させられるのは面倒だ。そこで、ソーシャルメディアにARショッピング機能を組み込むことが注目を浴びている。

Snapchatが、フィルター機能を活かし、ARショッピング体験(およびその分析)の充実に注力しているというのは有名な話だ。また、Facebookは、ロレアル(及び傘下のModiFace)と提携し、InstagramにARメイクアップ機能を導入した。

そんな中、アクセンチュアは、商品の発見から購入までSNS上で完結する「ソーシャルコマース」の世界市場が21年から25年にかけて、2倍以上の1兆2000億ドルまで成長すると予想している。

ARショッピング、ソーシャルコマース、ともに発展途上の領域ではあるが、両者の統合によって、悔いのないショッピングライフが送れるようになるかもしれない。

Augmented Reality is the Future of Online Shopping (TIME)