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ジェンダーエクイティを獲得するために

Focus

アイスランドに学ぶジェンダー平等

世界で最もジェンダー平等な国、それはアイスランドだ。世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダーギャップ指数」では、12年連続1位を獲得している。その背景には、どのような社会システムが存在するのか。

アイスランドのファーストレディ、エリザ・リード氏は、2017年に施工された「性別による賃金格差を禁止する」法律が大きな成功要因のひとつだという。男女ともに同一賃金が支払われている証明証の提出を義務付けたものであり、できない場合は罰金が課される仕組みだ。その結果、女性の約75%が経済活動を行なっている (アメリカは56%) 。

また、育児休暇の制度も充実している。夫婦でそれぞれ5ヶ月ずつ、追加の2ヶ月は2人で一緒に取得することができる。保育料が国から補助されるのも、働く親にとっては暮らしやすい環境だ。

これら社会システムをはじめ、教育やメディア、労働といった分野では各国のどのような動きが見られるのか。今週はこれらのテーマについて取り上げたい。

Iceland’s First Lady Eliza Reid: What our nation could teach the world about gender equality (i)

Opinion

無意識的な落とし穴

先週モロッコのメルズーガという街に訪れた。サハラ砂漠の砂丘がすぐそこに見える砂漠の街だ。そこで現地の家族と食事をする機会があったのだが、女性と男性の食卓がきっちり分けられていることに驚いた。加えて、料理や子育ては女性のみが行っており、大学に行けるのも男性だけのようだった。

教育というのは、少年期から青年期にかけて築くことができる社会的自立のための大きな基盤であり、その後の人生にも多大な影響を与える。

相対的に見るとやはり、アフリカ諸国のジェンダーギャップ指数は低いが、先進国と言われる日本のジェンダーギャップ指数も例外ではない。2021年のジェンダーギャップ指数はモロッコが144位だったのに対し、日本は先進国の中で最下位の120位だった。

男女共に高い教育水準をもつ日本の指数が低くとどまる要因として、ジェンダーバイアスの刷り込みが挙げられる。職場でのジェンダーバイアスは取り上げられることが多いが、家庭内教育において無意識に子どもに影響を与えやすい。「お兄ちゃんなんだから」「男の子なら」などと言ったワードや、両親の家庭内での関係が無意識に子供たちにジェンダーバイアスを植え付けているかもしれないのだ。未来を担う子どもだからこそ、柔軟で自由な世界を見つけてほしい。

「それはお母さんのジェンダーバイアスだよ!」──親子の間に潜む性別役割意識。【アンコンシャスバイアスを探せ!】(VOGUE JAPAN)

男性性のアップデート

Toxic Musclinity(有害な男らしさ)という言葉がある。

心理学者のシェパード・ブリスが80年代後半に提唱した概念で、元々は、「男性が感情を抑えることでときに暴力的な行動に至る」ことを、指していたという。

近年ではより広く、女性差別や暴力、ないしは、男性自身を抑圧するようなステレオタイプ=男らしさと捉えられている。

実際に、いわゆる伝統的な男性観を持つ人ほど、パートナーに暴力を振るいやすい、うつや自殺願望を抱えやすい、といった自他への悪影響が、研究で明かされている。

かくいう私も「男らしさ」という定規で、自分を評価したり、されたりすることは珍しくない。ナヨナヨした性格を「女々しい」と揶揄されたり、何となくマッチョな方が良いかなと思って筋トレしてみたり(3日も続かなかった…)

そろそろ、この「男らしさ」への見方をアップデートすべき時期かもしれない。

例えば、アカデミー賞11部門にノミネートされた『The Power of the Dog』は、かつて西部劇がヒロイックに描き出した「男らしさ」の悪き側面を鮮烈に切り取り、話題となっている。

逞しさを取り繕うことより、自分の苦悩や葛藤を打ち明けられること。力を顕示することより、他者を思いやれること。そういう新しい強さこそが、これからの時代に求められているのかもしれない。

Men who score highly on a 'man box' test are more likely to be violent toward others and get depressed themselves, a new study finds (Business Insider)

人生設計のフレキシビリティ

スタンフォード大学の社会学者シェリー・コレル氏は、「燃え尽き症候群の蔓延は、女性にとって破壊的な結果をもたらし、男女平等を一世代遅らせる可能性がある」と警告している。

将来もリモートワークを続けたいとの声がある一方で、社員が仕事と家庭のために「常にオン」を求められることは、燃え尽き症候群の増加に繋がっている。特に子育てや介護を両立しようとする女性の多くは退職を検討しているという。

最新のWomen in the Workplaceレポートによると、42%の女性が「いつも燃え尽きる」または「ほとんど燃え尽きる」と回答している。女性にとって暗黙のうちに家庭の仕事が負担になってしまうことはそれほど深刻だ。

仕事と家庭の両立は客観的に見えづらい課題であるため、いかに「フレックスタイム制」や「ベビーシッター補助」が利用可能になったとしても、燃え尽き症候群の一因でもある「精神面の公平性」を確保するのは難しいだろう。

そんな中、メルカリは福利厚生の一環として「卵子凍結」を導入した。これはそもそもキャリアを優先したい時期と被りがちな、妊娠・出産・育児というライフイベントを柔軟に設計するためのものだ。このようにシステム面からジェンダー公正を追求しようとする企業の取り組みが拡大していくと考えられる。

このような事例を見て、重宝されるのはジェンダーに縛られずに家庭内でお互いを「ケア」する姿勢ではないかと思う。このような制度を利用するかしないか、そんな大切な意思決定を支えるのはきっと身近な存在だろう。

「特権」に浸らず、様々な立場に置かれる人の目線になって日常の動線を思い浮かべてみよう。

Pandemic burnout is leading to devastating consequences for women, and it could set gender equality back a generation, Stanford sociologists warns (Stanford News)