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フードシステムのアンバランスに向けて

Focus

食糧危機への高まる懸念

ロシアによるウクライナ侵攻から2ヶ月が経過しようとしている。世界が混乱する中、国連世界食糧計画 (WFP) の事務局長デイビッド・ビーズリー氏は、「ウクライナでの戦争は、第2次世界大戦以来最大の食糧危機を引き起こしている」と警告した。

ロシアとウクライナは世界の穀倉地帯として知られており、世界の小麦の30%、トウモロコシの20%、ヒマワリ油の75〜80%を生産している。ロシアによる黒海の港の封鎖は、ウクライナからの輸出を1/4にまで減少させ、世界地域へ大きな影響を与えている。

ウクライナからの輸入に大きく依存するエジプトやレバノンでは食料価格が急騰。3月の小麦価格は、2月比で最大50%も値上がりしている。また、エネルギー供給の減少による燃料・輸送コストの高騰も、食料価格に追い討ちをかけている。

飢えに苦しむ人々へ食料支援を行うWFPも、ウクライナからの輸入に依存している機関のひとつだ。穀物の50%をウクライナから購入していたため、現在、月にかかる活動費が7100万ドル増加している。その結果、年間で支援できる人の数は400万人減少すると推定される。このような世界の食の問題を解消するためには何ができるのか。今週はこれらへの取り組みについて着目したい。

The War in Ukraine Is Creating the Greatest Global Food Crisis Since WWII, the U.N. Says (TIME)

Opinion

再分布としてのインバランス修正

ハイライトでも触れられている通り、ウクライナ侵攻によって食のサプライチェーンが断たれた。これにより、大きな打撃を受けているのはアラブ、アフリカ諸国である。チュニジアでは、小麦の50%をウクライナからの輸入に依存しており、ウクライナの食糧輸出が停止された今、インフレに苦しんでいる。また、サウジアラビアでも小麦の購入コストが40%上昇した。

しかし、食のインフレや食糧危機の問題はウクライナ危機からの話ではない。2019年のコロナウィルス感染拡大から、世界に張り巡らされたサプライチェーンはより脆弱なものとなってきている。これに関しては、カロリーベース、生産額ベースともに低い食料自給率の水準にある我が国も例外ではない。

やはり、食糧危機に対するソリッドな解答として地産地消が挙げられるのだが、地域や人口、土地利用の違いによって、現時点で生産消費を自立させるのはかなり難しいと言えるだろう。そこで注目したいのがフードバンクである。これは、包装のちょっとしたエラーや賞味期限の問題などで販売は難しいものを引き取り提供するシステムである。さまざまな国でフードバンクの取り組みが行われており、日本にも数多く活動団体が存在する

現在多くの活動が国や地域単位だが、国際規模で活動するフードバンクも存在する。援助としてではなく、再分布として食糧分布インバランスを解消することが鍵となりそうだ。

The US is experiencing a frozen food renaissance (QUARTZ)

捨てるべきか、食べるべきか

世界人口の10人に1人が飢餓で苦しむかたわら、毎年9億トン以上の食品が廃棄されている。うち6割は、家庭で発生しているというから驚きだ。私自身、食材を持て余してしまうことが多いので、他人事とはいえない。

食品廃棄は温室効果ガス排出量のおよそ8〜10%を占めるなど、環境インパクトも大きいだけに、その削減 / 再利用は重要な意味をもつ。

それでは、具体的にどのようなアクションで食品廃棄を減らすことができるだろうか。

たとえば、英国発のスタートアップOLIOは、ご近所さん同士で余剰食品を譲り合えるフードシェアサービスを提供している。フードバンクなど、産業レベルで食料を再分配する仕組みは定着しつつあるが、家庭レベルでも同様の動きに期待したい。

また、家庭内だけで完結する取り組みもある。たとえばロメインレタスの芯などは水につけておくことで再生栽培できる。とはいえ、さすがにキッチンで野菜を育てるのは、(私も含め)ハードルが高いと感じる人も多いはずだ。その場合は、捨てられがちな食材を取り入れたレシピなどを試すところからはじめてみてはどうだろう。

なかなか地球規模の問題と自分の家庭環境を結びつけるのは難しいが、まずは身の周りの無駄を減らすという視点で、食品廃棄の問題と向き合っていきたい。

HOW TO BUY LESS BUT EAT MORE: FROM BANANA SKIN RECIPES TO GROW YOUR OWN VEGETABLES (INDEPENDENT)

冷凍食品でキチンッ!

「冷凍食品は身体にイイ!」と唱う時代はもう直ぐそこだ。

今まで冷凍食品といえば、手抜きや添加物といったイメージが強かったのではないだろうか。今一度その食品のあり方を見つめ直してみると、意外な可能性に満ち溢れていた。

Quartzによれば、2022年1月の米国における冷凍食品の売上は、2020年1月と比較して26%増加している。コロナの台頭が引き金となった食習慣の変化、また食への危機感が高まっていることが背景にありそうだ。

まず、リモートワークで自炊しなければいけない日が増えたことは明瞭だ。日々の生活に「料理」というタスクが増えたことで、効率を重視するようになった人も多いのではないか。また、最近一層心配な災害への対策としても有効だ。生鮮食品に比べて長持ちする冷凍食材は、パンデミック買いなどによって食料が手に入らないことへの不安を減らしてくれる。

この波を受けて業界も冷凍食品のイノベーションに注力している。「健康」をテーマにローカーボや植物性食品のトレンドに対応した製品の開発だ。ヨーロッパでも、栄養バランスの整った調理済みの食事が冷凍配達されるサービスが人気なことを小耳に挟んだことがある。

カラダが嬉しい冷凍食品を活用して、乱れてしまった食生活をきチンッとしていきたいものだ。

The US is experiencing a frozen food renaissance (QUARTZ)