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青い地球を守るために

Focus

ウォーターフットプリントで見える化

コーヒーを1杯淹れるのにどのくらいの水が必要だろうか。

私たちが水問題について考えるとき「ウォーターフットプリント」が重要な指標となる。原材料・部品の調達から販売に至るまで、サプライチェーン全体における水の消費量を算出したものだ。改めて、コーヒー1杯 (125ml) で132Lもの水が消費される

そもそも、なぜ水問題について考えることが重要なのか。それは水資源の現状から明らかになる。地球の約97%は海水が占めており、私たちが飲むことのできる淡水は約3%だ。また淡水の約99%は地中や氷河として存在しており、川や湖を流れる水は1%未満となっている。

そんな貴重な水資源の約70%は農業で消費されている。特に肉やナッツ類などは野菜と比較し多くの水を消費するため、国民の食事パターンからも各国で大きな差が生まれている。また、デジタル機器やアパレル製品の製造をはじめとする工業用水は、使用量の約20%を占める。スマートフォン1台で、浴槽約160杯分もの水が消費されているという。今週は、そんな地球の水資源を有効活用するためにも、産業や地域別にみる問題、その解決策に着目したい。

How big is your water footprint? (DW)

Opinion

水から始まる資源の環を守るために

きれいな水、持続可能なエネルギー、十分な食糧。私たちの暮らしに、どれ1つとして欠かすことのできない要素だが、3者の間には資源利用をめぐるトレードオフという大きな問題が横たわっている。

たとえば、水の浄化や輸送にエネルギーが不可欠な一方、エネルギー生産もまた水資源を必要としている。また、農業とエネルギーの両分野で水ニーズが競合していることも、世界的な課題の1つだという。

このような相互関係を踏まえ、水・エネルギー・食糧の、統合的かつ分野横断的な管理を目指すのが、ネクサス・アプローチである。

一例として、イスラエル・ヨルダン間の”Water for Energy”プロジェクトが挙げられる。これは、水不足の深刻なヨルダンに淡水化した水を輸出する条件で、ヨルダンが太陽光発電によるクリーンなエネルギーをイスラエルへ輸出するというものだ。こうした取り組みは、国境を越えた資源配分の可能性を示している。

加えて、カメルーンにあるラグドダムも注目すべき事例の一つだ。灌漑用水の貯蔵と水力発電を担う同ダムは、乾季に農業用水の供給を、雨季に電力発電を優先する仕組みで、エネルギー・食糧、双方の生産に貢献している。

人口増加を背景に、水需要のさらなる増加が予想される中、今ある生態系や天然資源に負荷をかけることなく、水資源を利用していくためには、セクターや国の枠組みを超えたコラボレーションがますます求められていくだろう。

Global water agenda: What to expect in 2022 (Economist impact)

水不足の皺寄せはどこへ

もし水道から出る水が限られてしまう未来がすぐそばに迫っているとしたら、、、

世界が直面する水問題。途上国、先進国に関わらず水面下では世界の水不足が深刻なものになりつつある。人口が指数関数的に急増する中で、水の惑星に存在する淡水はほんの僅かだ。そこで、淡水が足りないのであれば、海水を飲み水にすればいいのでは?という考えから生まれたのが淡水化技術である。

この淡水化技術を使った淡水化プラントは、水不足が深刻な中東地域を中心として投資額は着々と膨らんでいる。パキスタン南部の街カラチは、サウジアラビアから10億ドルの投資を受けて、淡水化プラントを建設することが決まった

水不足に困る地域にとって、地球の97.5%を占める海水が飲み水に変わることは夢物語のような話だ。しかし、それに付随して生まれる副産物や影響ももちろん存在する。まず一つの問題として莫大なコストがかかるのだ。水はインフラの基盤であるにも関わらず、値段が高騰してしまえば水不足の解決には至らない。

また、脱塩の副産物として生まれる廃水は高塩分濃度の水溶液(ブライン)で、多くは海に垂れ流されているのが現状である。特に中東地域のブライン生産量は深刻な問題となっており全世界における発生量の5割以上を占めている。ブラインが海に流出することによって淡水化プラント周辺の塩分濃度が変化し、海水中の酸素レベルが低下する。これにより海底のカニや貝などの生態系に深刻な影響を及ぼすのだ。

このような事実を受けて、カリフォルニアのハンティントンビーチの太平洋岸に淡水化プラントを建設する計画は物議を醸している。しかし、住民が度重なる干ばつに頭を抱えていることも事実なのである。結局は、何が正解かではなくどうバランスをとっていくかというところになりそうだ。今ここで、完璧な解決策を見つけるのは難しい。いずれにせよ、私たちが受けている恩恵は何かの代償であることを忘れてはならない。それもまた事実である。

Column: Five things Gov. Newsom got wrong in supporting Huntington Beach desalination plant (Los Angels Times)

水ビジネスが叶える安心

歯を磨こうとした時、カンボジアの観光地シェムリアップにあるホテルの水道水が濁っていた。

日本できれいな水を常用していた私にとって衝撃の出来事だった。とはいえ、地震や台風による自然災害時はどうだろうか。インフラが途絶えてしまった時、安全な水を使い続けれらる保証はないだろう。ここではそんなグローバルとローカルな視点で、あらゆる水問題を解決しようと動く企業の取り組みを紹介したい。

1つ目はフィンランドのRiverRecycle社だ。海洋プラスチック汚染を最も排出する河川に500カ所の清掃・リサイクルポイントを設置することを目標にしている。その結果毎年300万トン以上の廃棄物が環境から取り除かれる。さらに、技術導入の際にはホストコミュニティーに新たな雇用を生み、40万人以上の人々に収入増がもたらされるなど、水問題を起点に多角的な問題解決に貢献している。

もう1つは日本の東大初ベンチャー、WOTA株式会社の取り組みだ。小型のポータブル水再生処理プラント「WOTA BOX」を開発したり、台風災害時には「WOTA BOX +屋外シャワーキットを避難所に設置した。きれいな水をいつでもどこでも使える「小規模分散型水循環システム」は革新的だ。海外からの問い合わせも止まないという。

このように世界中の人の日常を取り巻く水問題解決には、インフラを整えるために現地コミュニティーに有益な経済を生み出すビジネスと、ポータブルなリサイクルテクノロジーの開発が鍵になりそうだ。

水問題の解決がもたらす安心安全な日常が、多くの人に届く未来は近いかもしれない。

These innovations are pulling plastic pollution out of rivers to stop it reaching our ocean. Here’s how (World Economic Forum)