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人口減少と、その先に

Focus

人口減少のいま

日本における人口減少問題。その始まりは2005年、国勢調査によって2万人の減少が発表され、世間に広く注目されるきっかけとなった。そして今年の5月、イーロン・マスクが日本やイタリアの人口減少に言及し、再び高い注目を集めている。

改めて、人口減少とは特定の国や地域に住む人の数が時間とともに減少することだ。高齢化や移住、出生率、死亡率など様々な要因が組み合わさって引き起こる。

人口減少は日本だけでなく、多くの国が直面している。Business Insider は今後30年間 (2020〜2050) で最も人口減少が進む20カ国を予測。その上位はブルガリア、リトアニア、ラトビアと東ヨーロッパに多いことが分かる。また、その要因は国民の海外移住が大部分を占めている。

とはいえ、人口減少にはメリットとデメリットの双方が考えられる。人口が少なければ、より多くの資源を国民に分配することができ、1人当たりの富が増加する可能性もある。また、人口過多による公害や物価の上昇、環境問題の緩和も期待される。一方で日本でも頻繁に言われている労働力やGDPの減少など、デメリットにつながる可能性も十分にある。今週は各国が直面する人口減少の未来を、経済・政治・環境の観点から考えたい。

Countries With Declining Population 2022 (World Population Review)

Opinion

経済成長における正義とは

東京都の人口が今年26年ぶりの前年比マイナスを記録した。日本の人口は11年連続で右肩下がり、都道府県別に見ても前年比で増加しているのは沖縄県のみだ。日本を含め、少子高齢化が進む地域は、これから人口減少という課題に対して長い目で向き合うことになるだろう。人口減少における一番大きな懸念は、労働力が減ることによって引き起こされる経済縮小だ。しかし、即座に労働力である20~30代の人口を増やすことは不可能であり、実効性のある解決策を見つけるのはなかなか難しい。

そもそも、経済成長無くしては人類の未来はないのだろうか。確かに、多くの資源を消費し、お金を稼ぎ、それを使うことによって人々の生活水準は上がる。私たちは底知らぬ豊かさを追求してきた。しかし、資本主義のもとに、富の分配が平等に行われていないのもまた事実だ。世界の収入は第2次世界大戦以降700%増加したと言われているのにも関わらず、富の格差は大きくなり続けている。1960年以来、世界で最も裕福な2割の人々の所得が世界の所得の70%を占めていた。しかし現在では、85%の所得がこの2割の人間の所得であるという。さらに、コロナ禍で多くの人が職を失った一方で、世界トップ10の富豪の総資産は2020年3月と比べ2倍に膨らんだ。

世界経済は成長し続けている。極度の貧困に悩まされる人々が大幅に減ってきているのも事実であるが、それでもなお格差は埋まるどころか開いているのだ。経済成長とは誰のためにあるべきものなのか。この根本的な問いの前に人口減少を悲観するのは少し早いのではないか。

Do We Really Need Economic Growth? (Quickonomics)

スマートに縮む

人口減少の負の側面が注目される中、「人口の少ない地球は、資源への圧力を緩和し、気候変動の破壊的な影響を遅らせ、女性の家事負担を軽減することができる」といった可能性はかなり明るく映る。

The Lancet」に発表された国際科学者チームの予測によると、2100年までに出生率が代替水準を下回るのは、195カ国中、183カ国・地域とされている。そんな人口減少の先に待っている「長寿と少子化」の社会を想像してみたい。特にあらゆるジェンダー平等が追求されていく中、子供を持たない選択をする人々が増加していくことを考えると、出生率を維持し、より高めていくことがその課題の解決策として果たして現実的だろうか。

ドイツの人口学者、フランク・スウィアックニー氏は「各国は衰退と共存し、適応することを学ぶ必要がある」と言う。政治を見てみても、今後は「人口減少を守るか」より、「どうスマートに社会を再構築できるか」が論点になりそうだ。実際、先進国の中で出生率の水準が最も低い韓国では、政府が過去15年間に1780億ドル以上を子ども手当や医療費補助に費やして女性に出産を奨励してきたものの、十分な成果を上げていないと認めた。

特にアジアとヨーロッパで人口減少の影響は顕著だ。これを受け、韓国は大学の合併を推進している。日本では町の高齢化と縮小に伴い、自治体の統合が進んでいる。スウェーデンでは、学校から高齢者ケアに資源をシフトしている都市がある。ドイツは都市の縮小計画にも取り組んでおり、2002年以降、約33万戸の住宅が取り壊されている。

このように歴史に見る人口増加によって進んだ開発を、次はいかにスマートなエコシステムに変換しうるのか、ということが将来の政策を見つめていく大切な指標になりそうだ。

Long Slide Looms for World Population, With Sweeping Ramifications (The New York Times)

人口減少と環境のこれから

人口爆発から、人口減少の時代へ。

ワシントン大の研究チームは、2064年ごろ、世界人口が97億人に達し、ピークアウトを迎えると推計している。背景にあるのは、女性の社会進出と、それに伴う出生率の低下だという。

経済成長の側面からネガティブに語られることも多い人口減少だが、地球温暖化の緩和を期待する声も上がっている。

たとえば、アメリカでは、子供1人あたり、親のカーボンフットプリントがおよそ9,441トン増加するという試算がある。これは親自身の生涯排出量を大幅に上回る(5.7倍)数値だ。

たしかに、出生率の低下は温室効果ガスの削減に寄与しそうである。しかし、人口が減れば炭素排出量も自然に減っていくだろうという考えは、やや楽観的すぎるかもしれない。

Wealth Inequality Labの”World Inequality Report 2022”は、CO2総排出量のうち47.6%が、上位10%の富裕層に起因すると指摘している。一方、下位50%の排出量は、全体のわずか12%を占めるに過ぎない。

このようなデータを見ると、人数以上にライフスタイルの与える影響が大きいように写る。それでは、いかにして持続可能な暮らしを実現していくべきなのだろうか。

鍵になりそうなものの1つが街づくりだ。例えば、バルセロナでは、自動車の乗り入れを制限する区画「スーパーブロック」を設け、緑地や歩行者/自転車優先ゾーンを増やしている。実際に、同エリアでは、二酸化窒素汚染が33%減少するといった成果が確認されている。

2050年には世界人口の2/3が都市で生活すると予測される中、人にとっても、環境にとっても優しい都市設計の重要性はますます増していくだろう。

人口と世界 変わる多数派 常識が揺らぐ (日本経済新聞)