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社会の繋がりとウェルネス

Focus

外側の健康を考える

最近よく聞くウェルネスとは何か。

ケンブリッジの辞書によると、「健康である状態であり、特に目標に対し積極的に達成しようとしている場合」と定義づけられているものの、あまり掴みどころがない。一方で、Global Wellness Institute は、「全体的な健康状態につながる活動、選択、ライフスタイルを積極的に追求すること」と定義づけている。どうやらウェルネスとは健康な状態そのものではなく、健康を追い求めることを指すようだ。

そもそも、ウェルネスにおける健康は一体何を指すのか、改めて考える必要がありそうだ。 一般的にウェルネスは、体の健康にとどまらない多面的な側面を持つと言われている。基本的な要素として挙げられるのは、身体、メンタル、感情、スピリチュアル、ソーシャル、社会、環境の6つだそうだ。従来の健康が体の内に着目していたのに対し、社会や環境など自分の外側がウェルネスの要素として包括されているのは興味深い。

コロナウィルスの感染が再拡大する中、内閣官房が行った「人々のつながりに関する基礎調査」によると孤独感を抱える人は約4割。孤立化問題に伴って、自殺率や離婚率、DVの増加などの課題に対する不安は高まっている。

夏休みシーズン、学校や職場との距離が離れたり、家族との距離が縮まったりなど関係の変化が訪れる時期に今一度社会と自分のウェルネスのつながりを考えていきたい。

What is Wellness? (Global Wellness Institute)

Opinion

つながりを築くモチベーションはどこへ

私が晴れて社会人となった2年前、すでに世の中ではテレワークが普及していた。そのため、オンラインコミュニケーションの機会が多く、今ではすっかりそのスタイルに慣れてしまっている。そんなテレワーク時代に改めて重要性が高まっているのが職場での良好な人間関係だ。

McKinsey & Company の調査によると、職場内で良好な人間関係を感じている人はそうでない人と比べ、リーダーや同僚から高い支持を得ていると報告するケースが2倍高くなっている。

また、離職率の低下やナレッジ共有の増加など、企業へのメリットも挙げられる。アメリカの調査会社ギャラップによると、従業員1人の採用コストは最大で、年収の2倍にもなることが明らかになっており、良好な人間関係がもたらすメリットは大きい。

一方、コロナを機に働く人々の約75%が「他者とつながりが減少した」と報告している。中でも興味深いのは、新しい人との関係を築くモチベーションが欠如傾向にあることだ。これは自分の中でおぼろげに感じていたことでもあり、この2年ほどで新しい人と関係を築くのが少し苦手になった気がしている。

そんな中、私はいまフィリピンにある妻の実家に2週間ほど滞在している。約10人ほどが1つの家で生活しているこの空間はとても新鮮で、家族と話したり、料理やお酒をみんなで囲む時間はとても楽しいものだ。人と会う機会が減ったことで、子どもの時に感じていた「友だちを作るときの緊張感」に似た感覚を抱いていただけなのかもしれない。

Network effects: How to rebuild social capital and improve corporate performance (McKinsey & Company)

ヘルシーなマインドセットは家庭から

「今年の夏は皆んなでどこに出かけようか。」

弟の台湾留学を目前に、家族で思い出を作ろうと必死になっている。

Pediatrics誌に掲載された「子供の幸福度に関する国際調査」によれば、研究者たちは26カ国の37,000人以上の子供たちを調査し、家族との絆が深いと答えた青少年は、人生で成功していると認識しているという。ここで言う「成功」は自己受容、生きがい、他者とのポジティブな関係、自己成長、環境制御力、自律性の6項目で評価された。

研究を率いたコロンビア大学ロバート・ウィタカー博士は、「もとより、家族とのつながりが強いと薬物乱用などのリスクが低いことは報告されているが、この研究で『成功』との関連性が明らかになったことは新しい」と述べる。

子どもが安心な環境下で自己認識を深め、人生を肯定的に捉えられるようなマインドセットを養うには、どのような家庭内アクションが大切なのだろう。

記事によれば、関係を深める絶好の機会が夕食の席だという。ウィタカー博士は、「子どもたちが安心して自由に話せるような環境をつくること。そして話している間、大人は子どもたちの話に心から興味を持ち、ジャッジしないようにすることが重要だ」と提言する。

先日たまたま弟と食卓を囲んだときのこと。「失敗したら頼れるお姉ちゃんがいると思うと、挑戦しないことがとんだ損と思えた。」と彼が何気ない会話から紡いだ、世界に飛びたつ理由が強く印象に残っている。

VUCA時代、取り巻く環境が目まぐるしく変化する。家族との関係の中で揺るぎない自己を形成し、失敗を恐れずチャレンジできることは、そんな時代の「心の健康」を支えていくのだろう。

新型ウイルスとの付き合い方にも慣れてきたこの頃、日本でも少し足を伸ばしてみようという雰囲気が漂う。この夏、一番身近な社会である家族とのつながりをいま一度噛み締めたい。

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