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ソーシャルメディアのやすみ方

Focus

情報に溺れないために

いくつものアプリを右往左往して、身の回りに溢れる情報に今にも溺れそうだ。

情報過多に疲れが隠せない今日この頃、友人の間でSNSデトックスをする人が増えている。1週間程度アプリを消去し、オフラインで楽しめる趣味や友人とのひと時を楽しむ。デトックス期間終了後には、「他人と比較することをやめた」「時間を有意義に使えた気がする」とポジティブな感想を耳にする。それもそのはず、TikTok、Instagram、Twitter、Facebookなどのプラットフォームを7日間休んだ人は、幸福感が高まったことが、英バース大学の研究で明らかになった。

ソーシャルメディアの利用と心の健康の関連性が注目される中、世界的にインターネットユーザーの利用時間は年々増加傾向にある。Statistaによれば、インターネットユーザーはソーシャルメディアやメッセージングアプリに1日あたり144分費やしており、2015年から30分以上増えているという。

人々の心を掴んで離さない「ソーシャルメディア」とはそもそも何か。ケンブリッジの辞書では、「インターネット上でコミュニケーションや情報共有を行うためのウェブサイトやコンピュータプログラム」と定義付けられている。情報を摂取するだけでなく、ユーザーが主体的に発信できる「双方性」が肝となる。

1人で抱えていた問題を共有し、同志を見つけられるといったメンタルヘルスへの良い影響が提唱される一方で、情報を見逃すことへの恐怖感が社会的な不安を煽ってしまうような負の側面が目立つ。ソーシャルメディアの持つ様々な顔をふまえ、私たちの健康を維持するベストな方法を検討することが必要だ。

どのようにメディアとの距離を保つべきなのか、またどのように情報を健全に取捨選択できるのか。今回はソーシャルメディアとのヘルシーな付き合い方を、デジタルネイティブの私たちが模索してみたい。

A Week Off Social Media Reduces Depression and Anxiety: Research (Bloomberg)

Opinion

SNSとこころの適切な距離

何気なく開いたインスタのリールを、惰性でスクロールしているうちに、数時間が溶けた。失われた時の空虚さを嘆いても、後の祭りである。

似たような経験をされた方も多いのではないだろうか?自分の意図とは関係なしに情報を摂取させられている、あるいは可処分時間を吸い上げられている感覚。もちろん画面をスクロールしているのは他でもない自分自身なのだが…

ソーシャルメディアの中毒性は、どのように形作られているのだろう?

たとえば、Tiktokの「For You」フィードは、過去の視聴傾向と合致する動画だけでなく、多様なコンテンツを表示し、ユーザーが似たような内容の繰り返しに飽きないよう設計されている。

これら中毒性を促す仕組みにおいては、タイムラインのパーソナライズを規制するフィルターバブル透明化法や、子どもの依存症を誘発するおそれがある機能に対する罰則などが、議論されている。

とはいえ、まずは個人でもアルゴリズムの中毒性を理解し、自らの使い方に活かしてみるのがよいだろう。スクリーンタイムを設定してみる(経験上、パスコードは自分で設定しない方が良いかもしれない)、メッセージ機能しか使わない、親しい友人以外はミュートしてしまう(個人的なオススメ)などなど。

ドラスティックなSNS断ちは難しくとも、自分のこころと向き合い、適切な距離を推し量ってみてはいかがだろう?

How Addictive Social Media Algorithms Could Finally Face a Reckoning in 2022 (TIME)

情報の海に漕ぎ出そう

些細なことで携帯を開いて気がついたら1時間、見ているのはSNS。神隠しにでも遭った気分だ。実際は神隠しでも何でもなく、SNSの巧妙な落とし穴に嵌ってしまっているだけなのだ。

「簡単なアクセス」と「すぐに反応(報酬)がもらえること」の2つが私たちの脳に快感物質であるドーパミンを分泌させる引き金になっているようだ。なめらかな映像に、多様なコンテンツ、やむことのない通知と、際限なく「オススメ」を見つけてくるアルゴリズム。私たちは、SNSの社会的つながりによってドーパミンを過剰摂取してきた。

特にTikTokは、流行りの服、聴いている音楽など、常に最新トレンドをランダムに拡散し、FOMOに働きかける効果があり、若者の間で中毒性が高まっている。私は個人的にTikTokをインストールしたら負けだ、と勝手に思い込んでいるのだが、この中毒性ゆえの「負け」なのだろう。

TikTokの恐ろしい側面としてもう一つ挙げられるのが圧倒的な情報拡散力である。

「インフォデミック」という言葉を最近耳にした。インフォメーション(情報)とエピデミック(流行病)を掛け合わせた造語だ。これはネットでデマや噂が氾濫することによって社会に影響を与える現象のことだ。大きな災害や疫病流行の際にはこのインフォデミックが起こりやすくなるという。

コロナ禍においても、誤情報の発信によってトイレットペーパーの買い占めが起こったり、薬やワクチンの副反応が何の裏付けもなく発信されることが見受けられた。これらの多くが「〜すれば(もしくは〜しなければ)こんな目に遭う」といったような脅迫的な謳い文句でオーディエンスの不安を煽ることによって一層拡散力を強めている。これらのソーシャルメディアの否定的なニュースをスクロールし続けることを「ドゥームスクロール」と呼ぶようだ。特に不安定な時期に、私たちはドゥームスクロールを無意識のうちにしてしまう。ドゥームスクロールによってネット上の誤報に惑わされやすくなるため、私たちは意識的にポジティブな情報を目に入れる必要があるという。

また、情報に対して受動的である限り、得るものの質も上がらない。情報を享受し続けるのではなく、自分がどんな情報が欲しいのか常に振り返る必要もある。 情報が溢れて止まらない現代において、波に流されて自分を見失うことこそが一番危惧すべき事のようにも感じる。私たちが情報の海に漕ぎ出す時、前向きに情報と向き合うことと積極性を忘れずにいたいものである。

How to Use Social Media For Good: 7 Tips to Use Social Media Wisely (Business 2 Community)

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