わたしたちの食とその選択肢
Focus
食と地球環境のつながり
私たちが何気なく口にするもの。それは地球環境にとって、味わうときには想像もしないような影響力を秘めている。
世界のフードシステム、中でも畜産業の気候変動へのインパクトは無視できない。実際、畜産は世界の温室効果ガス排出の6分の1以上を引き起こしている。家畜の排出ガスにはメタンも含まれており、国連によると100年間でCO2の最大34倍もの環境破壊をもたらすという。
早急な対応が急がれる問題を背景に、産業はどう変化していくだろうか。Bloomberg Intelligence社のレポートによると、植物由来の乳製品や肉の代替食品の世界市場は、2030年までに5倍の1620億ドルに成長するそうだ。地球環境に負荷の高い食材のオルタナティブとして最新の注目を集めるのは昆虫食。昆虫養殖の世界的な規模は、2023年までに11億8,000万米ドルを超えると予想されている。1kgの昆虫タンパク質を生産するために必要な飼料、水、土地は、同じ量の牛肉を生産する場合の約10%で、温室効果ガスの放出はわずか1%だ。
直接的な影響を目に見ることが出来ない、「食」が抱えるイシューを身近に捉えることはなかなか難しい。そこで今回は、生活を取り巻く企業のアプローチと、今後私たちにどのような選択肢が広がっていくのか、Z世代の目線から考察していく。
Opinion
自分の健康から考える代替肉の未来
スーパーの陳列棚から、ハンバーガーチェーンのメニューまで。
デンマークにいた頃、ヴィーガンミートやヴィーガンチーズ、ヴィーガンミルクは、とても身近な食材だった。一方、日本で見かける機会は少ない。小洒落たスーパーやカフェにでも行けば、取り揃えているだろうが…
動物性タンパク質のオルタナティブが日本で市民権を得るには、どうすればよいのだろう?
普及状況で先行するヨーロッパに目を向けると、環境や動物倫理の議論はもちろん、健康面のメリットが、代替食品の躍進を下支えしているように写る。
BCGが欧米諸国の消費者を中心に実施した調査では、回答者の75%以上が、動物性タンパク質をリプレイスする動機として「健康的な食生活」を挙げている。
また、赤肉や加工肉の発がんリスクという観点で、植物由来のオルタナティブを支持するのが欧州議会だ。がんは、ヨーロッパで死因第2位の病である。
企業単位でも、ユニリーバは植物性タンパク質が血糖コントロールなどに寄与すると指摘し、代替肉と乳製品の年間売上高10億ユーロを目指すという(2025-2027年まで)。
もともと、栄養バランスが良く、ヘルシーなことで知られる和食は、大豆など植物性のタンパク質を多く取り入れてきた。日本市場で、オルタナティブミートがメインストリームへ躍り出る鍵は、「健康」「ヘルシー」といったキーワードかもしれない。
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