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「継続は力なり」とは言えども…!

Focus

めんどうな運動と向き合うために

運動は体だけでなく、心の健康にもいい。コロナ禍でそんな言葉を聞く機会が増えたように感じる。

たとえば、運動が心理療法や抗うつ剤同様、うつ病の治療に有用であると示す研究から、SNSの使用時間を30分ほど、運動時間に置き換えるだけでメンタルヘルスの向上に寄与するといった調査まで、運動の効用は様々な面から明らかになっている。

しかし頭では大事だと分かっていても、なかなか実行には写せないのが人間の性だろう。アメリカの成人男性を対象とする調査では、1週間の推奨運動量(150分)に達した人はわずか3.2%だったという。

97%の人々が運動不足を健康上のリスクと捉えているにもかかわらず、運動習慣が身についている人はほとんどいない。運動をはじめること、運動を続けることの難しさがよく分かるデータだ。

とはいえ、心と体の健康のために運動が欠かせないこともまた事実。では、いかにして「めんどくさい」運動を身につけていけばよいのか?続くオピニオンで考察する。

How Painful Should Your Workout Be? (New York Times)

Opinion

行動変容へのアプローチ

運動は嫌いじゃない。むしろ自分では好きな方だと思っている。しかし、高校の部活動を引退してからの7年間、継続的に体を動かしていないのもまた事実だ。運動の継続には、一体どのような手段が有効なのだろうか。

研究によると、行動に変化をもたらすメカニズムに「セルフレギュレーション (自己調整) 」と「社会的支援」というものがある。

セルフレギュレーションとは、目標達成のために自身の行動や感情をどれほどコントロールできるかというものだ。「テレビを観てリラックスする」という短期的な利益と、「将来の健康のためにランニングする」という長期的な利益。もちろん、行動経済学からみても人は短期的な利益を優先してしまう傾向にある。そのため、外部からの策が重要になるという。

たとえば、Apple Watchの「アクティビティ」では、設定した運動のゴール達成率を1日に数回通知してくれる機能がある。このようなリマインド機能は、より良い意思決定につながるという。

もうひとつ、社会的支援とは家族やパートナー、友人などの存在が自身の運動習慣に影響を与えるというもの。夫婦を対象に行ったある研究では、一方が減量プログラムに参加すると、もう一方の体重も大幅に減少しているという結果が得られた。これは運動習慣だけに限らず、食生活や生活習慣でもいえる話だという。

自分自身で強い意志を貫けることに越したことはないが、重要なのは「継続的な運動で健康になる」という目的だ。そのための手段として、機能や周りの環境に頼ってもみるのもいいのではないか。

Adopting healthy habits: What do we know about the science of behavior change? (National Institute on Aging)

「面倒くさい」を乗り越える

大学の講義とスクリーンに向かうインターンシップ。頭を動かすのは大好きだが、同時に座りっぱなしの生活にも危機感を覚えていた。ジムのサブスクリプションやダンススタジオのレッスン…登録したワークアウトに足を運び続けることは、3ヶ月持たずに億劫になってしまった。運動をしたいモチベーションはあってもいざとなると重い腰を上げられない、という経験は多くの人が共感してくれるのではないだろうか。

UBCの運動科学部准教授であるピューターマン博士の研究ではパンデミック中に自宅での運動がうつ病のレベルを大幅に低下させることを発見した。博士は「人々は運動について考えるとき、ジムで激しい運動をしなければならないと考えがちだ」と述べている。

私たちの内側から湧き出る「面倒くさい」を乗り越えるために、運動への心理的なハードルを下げる方法を掘り下げてみたい。キーは目標設定を最小化することとだという。

「今日はインターネットにアクセスして、自分に合ったアプリを見つけよう」そうすると「明日はアプリでエクササイズを選んで試してみる」とができると同大学理学療法科教授のリュー・アンブロー博士は述べる。例えばワークアウトアプリ「Down Dog」を使用すると、ワークアウトする分数を選択したり、エクササイズの強度を調整したり、各エクササイズの長さ (例: 30 秒) を選択したりできる。

アメリカでユーザー浸透率は2022 年に45.44% に到達すると予想されているデジタルフィットネスは、そんなワークアウトへのモチベーション維持に注目されている。ワークアウトを考えるとき、どうしても理想のカラダ像や完璧なルーティーンが先行してしまう。そうして大きな期待を寄せるよりも、いかに目標を小さくして日々の動線に落とし込めるかが習慣化への鍵となる。

How to get motivated to start exercising at home (University of British Columbia)

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How painful should your workout be? (The NewYork Times)