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テクノロジーと仕事の未来

Focus

AIの民主化と働き方の未来

自動生成AIの民主化が、いよいよ実現しつつある。対話型AIのChatGPTは、22年11月のリリースから、わずか2ヶ月でMAUが1億人を突破。大学のレポート課題から、ESまで、びっくりするほど身近な場面で、AIが大活躍している。

ゴールドマンサックスの調査によれば、自動生成AIは世界のGDPを7%増加させる可能性があるという。一方、自動生成AIが欧米における仕事の1/4を自動化し、3億人の労働者が影響を受けるとも指摘している。

また、雇用に限らず、自動生成AIの急速な台頭を危険視する声は小さくない。たとえば、イタリア政府は、①膨大な個人データの収集や、②年齢確認システムの未整備が、個人情報保護法に反するとしてChatGPTの利用を禁止している。ほかにも尤もらしいウソや、有害なコンテンツが生成・流布される危険性など、論点はさまざまである。

自動生成AIを取り巻くガバナンス整備のため、半年間の開発停止を求める ”Pause Letter” には、イーロン・マスク氏をはじめ、数多くの実業家や専門家がサインしている。

私たちの働き方をすでに大きく変えつつある、自動生成AI。つづくオピニオンでは、AIと共に働くヒントを考察する。

Pause Giant AI Experiments: An Open Letter (future of life)

Opinion

AIのアップデートと私たちの仕事

一世を風靡するChatGPT。

生活の一部となりつつAIの進化に、私たちの働き方はどう進化していくのだろうか。

McKinsey Global Instituteで労働市場調査を担当するAnu Madgavkar氏は、アメリカの労働者の4人に1人が、仕事にAIやテクノロジーがより多く導入されるようになると推測している。

雇用を脅かすというネガティブな視点より注目したいのは、AIのもたらすポジティブな可能性だ。MITのコンピュータ科学・人工知能研究所Julie Shah教授は、AIやロボットを「労働者を置き換えるのではなく、補強・強化」するために使ってもらうよう雇用主と協力しているという。

また、AIはこれまで人が行っていた作業を効率化できる一方で、技術を管理・指導する役割を生み出すという。AIリサーチサイエンティストやコンサルタント、セールスは産業を取り巻く新たな仕事として注目されている。

このようにどこか得体の知れないテクノロジーとの向き合い方には正解がない。最近では、Elon Musk氏らビジネスリーダーがAI開発の一時停止を呼びかける公開書簡に署名したことが話題となった。ただテクノロジーの進化を加速させれば良いという訳ではなく、その危険性を適切に評価する必要があるとの主張だ。

今後揺れ動いていくであろうAIの議論に、私たちの仕事はより柔軟性と創造性が求められる。リスクに備えながらも、生活の豊かさや仕事のやりがいを担保するために、ますます監視の目を光らせる必要がありそうだ。

US experts warn AI likely to kill off jobs – and widen wealth inequality (The Guardian)

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